2019 年から 2021 年までのイタリア・トスカーナ州における病院獲得型ニューデリー・メタロ-β-ラクタマーゼ産生腸内細菌目細菌の動向:COVID-19 パンデミックの影響★★
Trends in hospital acquired New Delhi metallo-beta-lactamase-producing Enterobacterales in Tuscany (Italy) from 2019 to 2021: impact of the COVID-19 pandemic G. Arzilli*, S. Forni, L. Righi, S. Barnini, P. Petricci, E.M. Parisio, M. Pistello, P. Vivani, G. Gemignani, A. Baggiani, T. Bellandi, G. Privitera, F. Gemmi, L. Tavoschi, A. Porretta *University of Pisa, Italy Journal of Hospital Infection (2023) 137, 44-53
目的
イタリア・トスカーナ州では 2018 年以来、入院患者においてニューデリー・メタロ-β-ラクタマーゼ産生カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(NDM-CRE)が観察されることが増え、2019 年に制御策の強化の実施によって伝播の減少を成功させることにつながった。トスカーナ州における COVID-19 パンデミック時の NDM-CRE の疫学について述べる。
方法
2019 年 1 月から 2021 年 12 月まで、トスカーナ州の病院 5 施設に入院している NDM-CRE 患者に関するデータを収集した。内科病棟および重症管理病棟における在院日数に対する毎週の NDM-CRE 症例の発生率を算出した。2020 年 3 月から 12 月に、NDM-CRE の発生率を COVID-19 の診断によって層別化した。多変量回帰分析を実施し、分析した 2 期間および COVID-19 の母集団間の転帰の違いを評価した。
結果
2020 年 3 月から NDM-CRE 症例の増加が認められ、COVID-19 による入院に関連していた。COVID-19 患者は、患者の特徴(年齢、Charlson index)、病歴、転帰(NDM-CRE 感染/保菌、集中治療室への入室、入院期間、死亡率)を含む複数の変数が非 COVID-19 患者と有意に異なった。パンデミック前の期間の症例(187/100,00)と比較した場合、パンデミック時は、非 COVID-19 患者(273/100,000)と COVID-19 患者(370/100,00)の両方で、在院日数あたりの NDM-CRE 症例の発生率がより高いことが認められた。
結論
我々のデータは、COVID-19 パンデミック時のトスカーナ州の入院患者における NDM-CRE の拡散の再流行と、患者の症例情報の変化を示唆している。観察された NDM-CRE の病院伝播の増加は、主に COVID-19 管理を対象とした感染予防・制御法の変更に関連している可能性があり、病院の準備と危機管理計画に新たな課題をもたらした。
監訳者コメント:
NDM-CRE は、COVID-19 の流行により、職員の人員不足や過剰な入院患者数に加え、COVID-19 を主体にした感染対策に変更されたことで感染対策が不十分となり結果的に院内伝播が発生するとともに、COVID-19 肺炎での細菌性肺炎との合併を考慮した抗菌薬の使用による菌交代が CRE の定着を助長した可能性もある。COVID-19 パンデミックは、世界的に発生数の減少はあるもののエンデミックな状況に変わっており、今後 COVID-19 を考慮した耐性菌への感染対策を考えてゆく必要がある。
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