病院内におけるネブライザー療法中のエアロゾルフェイスマスク汚染についてのマイクロバイオームレベルの解析★
Microbiome-scale analysis of aerosol facemask contamination during nebulization therapy in hospital C.S. Swanson*, R. Dhand, L. Cao, J. Ferris, C.S. Elder, Q. He *The University of Tennessee, USA Journal of Hospital Infection (2023) 134, 80-88
背景
エアロゾルフェイスマスクの微生物汚染は、ネブライザー療法中における院内感染源となる可能性があり、こうした汚染細菌を同定する取り組みが促されている。医療デバイスにおける微生物の同定は、従来は培養に基づく方法に頼っており、この方法ではこうした微生物汚染物質の大部分を検出することができない。この課題は、複雑なマイクロバイオームのプロファイリングに適した、培養によらない、シークエンシングベースの技術を用いることで克服が可能と考えられる。
目的
ネブライザー療法中に用いられるエアロゾルフェイスマスクにおける微生物汚染物質の特徴を明らかにすること、ならびにこうした微生物汚染物質の組成に影響する因子の特定を、培養によらないハイスループット・シークエンシングを用いた包括的なマイクロバイオームレベルのプロファイルの取得および解析によって行うこと。
方法
入院患者から収集した使用済みのエアロゾルフェイスマスクを、培養によらない 16S rRNA 遺伝子アンプリコンシークエンシングを用いて解析し、微生物汚染物質についてマイクロバイオームレベルの包括的プロファイルを取得した。マイクロバイオームレベルの解析を実施して、フェイスマスクにおける微生物汚染物質の潜在的汚染源を特定した。
結果
培養によらないハイスループット・シークエンシングを用いて、エアロゾルフェイスマスク上における微生物汚染物質についてマイクロバイオームレベルのプロファイルを取得できることが実証された。マイクロバイオームレベルのプロファイルで可能となった微生物汚染源の特定により、エアロゾルフェイスマスクにおける微生物汚染物質と、ヒトの皮膚および口腔内の微生物叢との関係が明らかになった。レボフロキサシンを用いた抗菌薬療法は、口腔内微生物叢によるフェイスマスクの汚染を低減することが明らかになった。
結論
シークエンシングに基づくマイクロバイオームレベルの解析により、エアロゾルフェイスマスクにおける微生物汚染物質の包括的な特性解析を行うことができる。マイクロバイオームレベルの解析から得られた見通しは、エアロゾルフェイスマスクの微生物汚染物質への曝露から生じる院内感染のリスクを予防・低減するための効果的な戦略(例えば、潜在的な汚染源の対象を絞った除去など)を開発するために有用である。
監訳者コメント:
エアロゾルフェイスマスクの微生物汚染を培養によらず、シークエンシングに基づくマイクロバイオームレベルで解析した研究。マスクの汚染が口腔内だけでなく、皮膚微生物叢が起因される可能性があることが明らかとなった。抗菌薬の使用と医療機器の汚染との関連性について報告しているのが興味深い。
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