イングランドにおける画像のデジタル化による退院後サーベイランス:患者登録、参加、臨床医の対応時間、手術部位感染症、およびカーボンフットプリントの評価★

2023.03.10

Image-based digital post-discharge surveillance in England: measuring patient enrolment, engagement, clinician response times, surgical site infection, and carbon footprint

M. Rochon*, A. Jawarchan, F. Fagan, J.A. Otter, J. Tanner
*Guy’s and St Thomas’ NHS Foundation Trust, UK

Journal of Hospital Infection (2023) 133, 15-22


背景

手術部位感染症(SSI)は、患者、その家族、医療提供者に大きな影響を及ぼす可能性がある。入院期間の短縮に伴い、退院後サーベイランスの要素がますます重要になっている。退院後サーベイランスデータを収集する従来の方法に対して、患者のスマートフォンにより創傷のデジタル画像を取り入れる積極的サーベイランスは効果的な代替法となるかもしれない。

目的

患者のスマートフォンによる退院後サーベイランスの実施において、患者の登録と参加(無回答の理由を含む)、臨床医の患者への対応時間、SSI 発生率、およびカーボン排出量の達成状況を明らかにすること。

方法

成人心臓外科 2 施設において、安全な Islacare(Isla)システムを用いて患者のスマートフォンによるルーチンの退院後サーベイランスを行い、1 か月間(2022 年 6 月)の評価を実施した。

結果

Isla に対する患者の初回の回答率は 87.3%で、患者の大多数(73%)が 30 日間を通して参加を継続した。年齢、性別、手術の種類、病院までの距離に、Isla 回答者と非回答者間で有意差はなく、病院が退院時に写真を提供した患者と提供しなかった患者間でも有意差はなかった。Isla 使用の患者は術後入院期間がより短かったが(P = 0.03)、これは Isla プラットフォームに起因するものではなかった。患者がスマートフォンを所有していないことと技術的な問題が、参加の主な障壁であった。全体として 9 件の SSI が記録され、そのうち 8 件は Isla サーベイランスにより、1 件は転院での再入院により特定された。SSI と関連するカーボン排出量は、5 ~ 2,615 kg CO2e の範囲であった。

結論

実環境において、患者のスマートフォン使用は、創傷画像などの退院後サーベイランスデータを収集するための効果的な方法である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

この研究は、スマートフォンを用いた患者の退院後サーベイランスに関する実証的な評価を提供している。研究により、スマートフォンによるサーベイランスは患者にとって容易で、回答率も高いことが示された。また、この方法は手術部位感染症の発生率を特定するためにも有用であり、その他の病院内の環境問題に関する評価にも役立つことが示された。ただし、スマートフォンの所有や技術的な問題が参加の主な障壁であることが示されたため、今後はこの問題を解決することが必要である。全体的に、スマートフォンを使用した退院後サーベイランスは有望な代替法であると考えられ、また他の感染症などでも有用である可能性がある。

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