手術器具の汚染除去法の評価において表面に付着したプリオンの感染性の顕微鏡的高感度定量法
Sensitive microscopic quantification of surface-bound prion infectivity for the assessment of surgical instrument decontamination procedures T.J. Secker*, R.C. Hervé, C.W. Keevil *University of Southampton, UK Journal of Hospital Infection (2023) 132, 116-124
背景
病原性プリオン(PrPSc)は、アミロイドに富む疎水性蛋白であり、手術器具表面に強固に付着し、再利用可能な手術器具の再処理においてもっとも困難な標的病原体の一部である。他の検出できないなプリオン汚染の存在を増幅して検出する in-vitro 法が利用できるが、関連する感染性は測定されない。これらの方法のほとんどがプロテイナーゼ K の使用に頼っているが、この使用は相当量の PrPSc 消失につながり、偽陰性となる可能性がある。
目的
感染組織およびスパイクしたステンレス鋼表面における 22L プリオン株感染後の N2a #58 細胞のアミロイド蓄積の動的定量化のために、プロテイナーゼ非処理の in-situ 高感度法を開発すること。
方法
溶液中または乾燥状態での 22L プリオン株による N2a #58 細胞の培養物をステンレス鋼ワイヤーにスパイクし、高感度蛍光顕微鏡を用いて数回の継代にわたりプリオンアミロイド凝集の蓄積を直接測定した。
結果
残存するプリオン感染性を試験する今回の方法を用いて、10-log のダイナミックレンジが確認され、これは市販の洗浄剤によってプリオンの汚染除去の有効性にばらつきがあることを立証するものであった。
結論
本稿で提示した細胞ベースの新たな感染性試験法は、サンプル中の PrPSc のプロテイナーゼ K による消化を一部または場合によっては完全に回避できるうえ、安価であり、倫理的な問題がなく、異なるプリオン株検出に対する適応性がある。残存プリオンの感染性と相関しない可能性がある総残存蛋白の測定よりも、今回の方法は感度が高く、洗浄剤の有効性試験に使用することができる。
監訳者コメント:
残存プリオンの感染性に関する実証は大変困難で有り、かつ再現も難しい。地道な検証が必要である。
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