得られた教訓:SARS-CoV-2 の院内アウトブレイクの疑いに関するリアルタイム調査における全ゲノムシークエンシングの使用★★
Lessons learned: use of WGS in real-time investigation of suspected intrahospital SARS-CoV-2 outbreaks H. Berggreen*, A.H. Løvestad, K. Helmersen, S.B. Jørgensen, H.V. Aamot *Akershus University Hospital, Norway Journal of Hospital Infection (2023) 131, 81-88
背景
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)は院内感染およびアウトブレイクの継続的な感染源となっている。ノルウェーの Akershus 大学病院(Akershus University Hospital)では、病院アウトブレイクの可能性を調査するために、従来の接触者追跡調査とリアルタイムでの全ゲノムシークエンシング(WGS)サーベイランスを併用している。
目的
SARS-CoV-2 パンデミック中の病院アウトブレイクの調査とサーベイランスにおいて、リアルタイムのツールとして WGS を用いる場合に直面する利点と課題について述べること。
方法
SARS-CoV-2 検査陽性となった全医療従事者を対象に、ルーチンの病院内での接触者追跡調査を実施した。ナノポアシークエンシングおよび ARTIC Network のプロトコールを用いて、すべての陽性患者および医療従事者のサンプル由来のウイルス RNA をリアルタイムで配列決定した。ウイルスゲノム配列分析を実施した5 例以上を含むアウトブレイク疑い事例について述べた。
結果
9 件のアウトブレイクが接触者追跡調査により、1 件のアウトブレイクがWGS の結果により疑われた。5 件のアウトブレイクが確認され、そのうち 2 件のアウトブレイクは支持されたが WGS によって高い信頼性が確認できず、1 件のアウトブレイクは 2 つの異なる系統から成ることが判明し、2 件のアウトブレイクは否定された。
結論
WGS は従来の接触者追跡調査と併用する場合、病院アウトブレイクの調査における有用なツールとなる。WGS データの組入れによって、アウトブレイクの区分が改善され、未知の感染伝播の連鎖が特定され、現在の感染制御策の弱点が浮き彫りになった。
監訳者コメント:
コロナにおける院内感染はその感染力の強さから、早期の的確な感染制御が必要であるが、WGS による分子疫学と実地疫学調査を同時並行で実施することで、アウトブレイクと判断されたものが、別の感染源であったり、あるいは別のものと考えていたものが同一の感染源であったりことが判明する場合があり、リアルタイムで実施される WGS による分子疫学解析は新たな感染制御のツールとして利用価値が高く、これからの耐性菌やインフルエンザ、RSV などの医療施設内感染の強力なツールとなるだろう。検体採取から結果報告までの TAT(結果報告所用時間)の短縮と煩雑な手技の自動化が今後解決すべき課題である。
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