SARS-CoV-2 の媒介物伝播を評価するためのウイルス培養:システマティックレビューとメタアナリシス★★

2022.12.02

Viral cultures for assessing fomite transmission of SARS-CoV-2: a systematic review and meta-analysis

I.J. Onakpoya*, C.J. Heneghan, E.A. Spencer, J. Brassey, E.C. Rosca, S. Maltoni, A. Plüddemann, D.H. Evans, J.M. Conly, T. Jefferson
*University of Oxford, UK

Journal of Hospital Infection (2022) 130, 63-94


背景

SARS-CoV-2 伝播における媒介物の役割は明らかでない。

 

目的

SARS-CoV-2 が媒介物を介して伝播し得るかどうかを、ウイルス培養研究から得られたエビデンスを用いて評価すること。

 

方法

World Health Organization COVID-19 Database、PubMed、LitCovid、medRxiv、および Google Scholar において、2021 年 12 月 31 日に検索を行った。媒介物伝播を検討し、陽性媒介物サンプルの細胞変性効果を評価するためのウイルス培養と、細胞変性効果の原因としての SARS-CoV-2 の確認を行った研究を組み入れた。modified Quality Assessment of Diagnostic Accuracy Studies-2(QUADAS-2)基準を改変したチェックリストを用いたことによるバイアスのリスクについて評価した。

 

結果

研究 23 件を組み入れた。全体的なバイアスのリスクは中等度であった。研究 5 件では、媒介物培養により複製増殖可能なウイルスが認められ、3 件では媒介物サンプルをヒト臨床サンプルとマッチさせるためにゲノムシークエンシングが用いられていた。ウイルス培養陽性が認められたサンプルの平均サイクル閾値(CT)は、陰性結果が示された培養サンプルと比べて有意に低かった(標準化平均差-1.45、95%信頼区間[CI]-2.00 ~ -0.90、I2 = 0%、P < 0.00001)。複製増殖可能なウイルスが分離される尤度は、CT < 30 の場合に有意に高かった(相対リスク 3.10、95%CI:1.32 ~ 7.31、I2 = 71%、P = 0.01)。感染性が認められたサンプルは、ほとんどが症状時発症から 7 日以内に検出された。研究 1 件では、媒介物からヒトへの SARS-CoV-2 伝播の可能性が示された。

 

結論

既に発表された研究によるエビデンスから、複製増殖可能な SARS-CoV-2 が媒介物上に存在することが示唆される。複製増殖可能な SARS-CoV-2 は、臨床サンプルおよび媒介物サンプルにおいて PCR CT < 30 の場合に有意に高い割合で認められた。今後の研究によって、SARS-CoV-2 の感染性の持続期間および媒介物からの伝播の頻度を検討すべきである。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

環境表面など媒介物を介した感染については、その頻度やいつまで感染性が持続するのかなど不明な点が多い。これまでの研究から蛋白の存在はウイルスの生存を長引かせることが実験的にわかっており、環境整備の重要性を訴える根拠となっている。また陽性患者の検体の PCR の Ct 値が 30 以上になるとウイルス培養ができなくなることは良く知られており、環境表面においても同様のことが判明した。一方で、環境から感染したとする事例の報告は少なく、汚染環境がどの程度感染拡大に寄与しているかは不明のままである。病原体で汚染された手は環境表面の汚染の原因となるため、手指衛生の重要性を再認識したい。

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