ベルギーの新生児集中治療室における中心ライン関連血流感染症に対する国際的予防ガイドラインの遵守:全国調査★★
Compliance with international prevention guidelines for central-line-associated bloodstream infections in neonatal intensive care units in Belgium: a national survey L. Mahieu*, K. Van Damme, K. Mertens, J. Pierart, M. Tackoen, V. Cossey *Antwerp University Hospital, Belgium Journal of Hospital Infection (2022) 129, 49-57
背景
中心ライン関連血流感染症(CLABSI)は、新生児集中治療室(NICU)の患児における病的状態の予防可能な原因である。
目的
ベルギーの NICU における CLABSI 予防のための国際的ガイドラインの遵守について評価すること、また CLABSI に寄与する病棟の特性について検討すること。
方法
様々な NICU において、カテーテル挿入、カテーテル管理および品質管理の測定値について、CLABSI 予防ガイドラインに対する遵守度を測定するための調査を実施した。Poisson 回帰モデルを用いて、実施された予防ガイドラインの各項目に対する CLABSI の補正相対リスクを推定した。多変量直線回帰を用いて、ガイドライン遵守率と、施設特性および 2015 年から 2016 年の CLABSI 発生率との関連を推定した。
結果
ベルギーにおいて、全 CLABSI 発生密度は 1,000 中心ライン日当たり 8.48 で、規模の大きい NICU のほうが高く 10.87‰対 6.69‰であった(P < 0.05)。遵守率が最も高かった予防項目はカテーテル挿入(64%)であり、カテーテル管理および品質管理については低かった(それぞれ、47%および 50%)。挿入の項目(P = 0.051)および品質管理の項目(P = 0.004)への遵守率が高いことは、CLABSI リスクが低いことと関連したが、この関連はカテーテル管理では認められなかった(P = 0.279)。ガイドライン遵守を補正すると、NICU の規模が CLABSI の独立決定因子であることが示された(P = 0.002)。
結論
ベルギーにおいて、NICU における国際的 CLABSI 予防ガイドラインの遵守率は、中等度から不良であった。NICU におけるガイドライン遵守は、CLABSI 発生率が低いことと有意に関連する。ベルギーの NICU における現在の実践と国際的ガイドラインの間にギャップが存在する理由については、さらなる研究が必要である。
監訳者コメント:
国際的 CLABSI 予防ガイドラインとして、米国 CDC(2011)、米国 SHEA(2014)、英国NHS(2014)の 3 つのガイドラインを基に、ベルギーの NICU における遵守率調査が実施された。質問内容は挿入時の 17 項目、カテーテル維持管理の 15 項目、品質管理の 7 項目で構成されている。これらのガイドラインは NICU に特化された項目ではないため、NICU で実際に実践されている感染防止対策が反映されていない可能性、遵守状況が他者観察ではなく自己申告であること、調査項目に抗菌薬使用、栄養管理、看護スタッフの配置の状況などが含まれていないなど、調査方法に課題も残る。一方で、ガイドライン遵守率と CLABSI発生率の相関があることも判明しており、特に挿入と品質管理の項目の遵守率向上が望まれる結果となった。
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