公衆の手指消毒ディスペンサーにおけるアルコール耐性および抗菌薬耐性の細菌性病原体の保有率★
Prevalence of alcohol-tolerant and antibiotic-resistant bacterial pathogens on public hand sanitizer dispensers Y.W.S. Yeung*, Y. Ma, S.Y. Liu, W.H. Pun, S.L. Chua *The Hong Kong Polytechnic University, China Journal of Hospital Infection (2022) 127, 26-33
背景
COVID-19 パンデミックの出現以降、衛生目的と使いやすさから手指消毒用アルコール製剤ディスペンサーが、公衆および臨床環境の大部分で設置されている。
目的
手指消毒用ディスペンサーに消毒剤耐性の細菌性病原体が定着し、疾患や抗菌薬耐性を拡散する可能性があるかどうかを明らかにすること。
方法
現在運用中の自動手指消毒用ディスペンサーの、とくに消毒剤と直接接触する噴霧ノズルからサンプルを採取した。微生物学的汚染を評価するために、培養依存性の細菌培養とマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS)を用いた。アルコール処理による迅速殺菌試験とバイオフィルム根絶試験のために細菌分離株を選択した。米国臨床検査標準化協会(Clinical and Laboratory Standards Institute)のガイドラインに基づき、抗菌薬の最小発育阻止濃度試験を実施した。Caenorhabditis elegans 感染症モデルを用いて細菌分離株の病原性の可能性を評価した。
結果
臨床環境、食品産業、公共の場など52カ所の手指消毒用ディスペンサーのほぼ 50%で、細菌数 103~106/mLの汚染が認められた。細菌同定により、もっとも頻度の高い病原菌としてバチルス・セレウス(Bacillus cereus)(29%)が明らかにされた一方で、グラム陰性病原菌はエンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)のみであった(2%)。B. cereus および E. cloacae の分離株を選択してさらに評価したところ、これらの分離株および形成されたバイオフィルムはアルコールに耐性を示し、生存率は最大 70%であることが確認された。これらはさまざまなクラスの抗菌薬に耐性を示し、C. elegans 感染症モデルの実験株よりも病原性が強かった。
結論
手指消毒用ディスペンサーは病原菌や抗菌薬耐性の拡散の潜在的温床となっており、それを知らない使用者によって感染症の伝播がもたらされる。アルコール耐性病原菌の出現を予防するための手指消毒用ディスペンサーの適切な維持管理により、公衆衛生保護および消毒用アルコールの継続使用が確実となるであろう。
監訳者コメント:
「容器への継ぎ足しはしない」を徹底するための良い根拠が一つ増えた。
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