「8 時間の装着+消毒シミュレーション」の複数サイクル中における N95 マスクの濾過効率★
Filtration efficiency of N95 filtering facepiece respirators during multi-cycles of ‘8-hour simulated donning + disinfection’ J. Zhu*, Q. Jiang, X. He, X. Li, L. Wang, L. Zheng, P. Jing, M. Chen *Key Laboratory of Gas and Fire Control for Coal Mines (China University of Mining and Technology), China Journal of Hospital Infection (2022) 127, 91-100
背景
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のようなエアロゾル媒介疾患は、世界の様々な地域で折に触れてアウトブレイクを発生させる可能性があり、使い捨てマスクの短期的な不足とそれによるその再使用を不可避的にもたらす。
目的
N95 マスクの効果的な消毒方法、再使用可能な期間と頻度について検討すること。
方法
自作のマスクシミュレーションテストシステムに基づき、また 3 種類の N95 マスク × 0 ~ 200 nm の NaCl エアロゾル × 3 種類の呼吸流速率シミュレーション(15、50 および 85 L/分)× 2 種類の消毒方法(乾熱処理および紫外線照射)の組み合わせによる実験条件下において、本研究では濾過率≧ 5%となるまで複数回の「8 時間の装着+消毒シミュレーション」中に、すべてのマスクについて濾過効率の変化を連続的に測定した。
結果
再使用(複数回の 8 時間装着)された N95 マスクに対する乾熱処理および紫外線照射による複数サイクルの処理は、マスクの濾過効率に対してわずかな効果しかなく(0.5%未満)、呼吸流速 85 L/分においても、テスト対象としたすべての N95 マスクは、30 時間以上または「8 時間の装着+消毒」による再使用 4 サイクル以上にわたり、95%以上の濾過効率を維持することができた。一方、低い呼吸流速(15 L/分)と呼気バルブの組み合わせにより、最長 140 時間、あるいは「8 時間の装着+消毒」による再使用 18 サイクルにわたり N95マスクの使用性の持続を延長することができた。マスクの装着時間が延長するとともに、エアロゾルの浸透が負の二次的相関を示しながら二次関数的に徐々に増加してゆくが、8 時間装着の各サイクル中における増分透過率は 0.9%未満であった。
結論
N95 マスク再使用の複数サイクルを乾熱処理または紫外線照射による消毒を組み合わせて実施することは可能である。
監訳者コメント:
N95 マスクは、材質としてエレクトレットフィルターを使用しており、アルコールや蒸気など種々の処理により静電気の帯電効果がなくなり、ろ過効率が著しく減弱する。現在、紫外線、乾熱処理、過酸化水素蒸気は N95 マスクのろ過機能を落とさずに病原体の不活化が可能であり、再使用時の対応策として推奨されている。本論文は、N95 マスクの再使用に関して、紫外線照射(波長 254 nmで 20 J/㎠ の照射 30 分)または乾熱処理(70°C で 30 分)により、複数回使用可能であることを実験的に証明したものである。いずれの処理においても、毎回、使用前にフェイスシールチェックを実施し、漏れがないかを確認することは必須条件である。
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