大学医療センターにおける採血時初期血液分離装置® は、血液培養汚染とバンコマイシンの使用を低減させる★★

2022.02.28

Initial Specimen Diversion Device® reduces blood culture contamination and vancomycin use in academic medical centre

L.E. Nielsen*, K. Nguyen, C.K. Wahl, J.L. Huss, D. Chang, E.P. Ager, L. Hamilton
*Brooke Army Medical Center, USA

Journal of Hospital Infection (2022) 120, 127-133


背景

血流感染症の疑い例において、正確な血液培養の結果が適時診断および適切な抗菌薬投与のために重要である。

 

目的

Brooke Army Medical Center での 6 か月間の品質改善プロジェクトで、血液培養汚染(介入前 6 か月間の汚染率 6.8%)の低減における採血時初期血液分離装置® Steripath®(Magnolia Medical Technologies, Seattle, WA, USA)の有効性を評価した。

 

方法

採血時初期血液分離装置(商品名Steripath® )または標準法のいずれかを用いて救急部の血液培養物を採取した。20 mL の血液サンプルを採取直後に好気性培地と嫌気性培地に播種し、自動微生物検出装置を用いて 5 日間培養した。陽性ボトルをグラム染色し、平板培養した。入院または救急部受診の各患者の血液培養セット内の最初の陽性ボトルすべてを対象に、迅速分子ポリメラーゼ連鎖反応による同定検査を実施した。Vitek-2 システムを用いた抗菌薬感受性試験において菌種を推定した。

 

結果

標準法では汚染イベントが 800 例中 53 例(6.6%)で発生したのに対して、Steripath® を使用した場合、汚染イベントは 1,016 例中 7例(0.69%)であった。Steripath® 使用は、標準法と比較して血液培養汚染の発生率 90%低下と関連した。試験後、Steripath® 使用は標準的な手法として全病院レベルで行われており、後向きデータの分析から、バンコマイシン使用日数 31.4%減少は Steripath® 導入の結果であると考えられた。

 

結論

Steripath® 使用は、標準法と比較して細菌血流感染症に対する血液培養汚染イベントを有意に減少させた。その後のSteripath® 導入により、全体的なバンコマイシンの使用量が減少した。Steripath® の広範な推進により、抗菌薬適正使用支援が強化され、不要な抗菌薬投与による抗菌薬耐性が抑制されるであろう。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

Steripath は、穿刺時の最初に採取される血液には皮膚常在菌が混入しておりこの最初の数 mL を別のチャンバーに分離した後に血液培養用の血液が採取できる装置で、コンタミ率を削減する血液培養採取装置としてマグノリア社(https://magnolia-medical.com/steripath/)から販売されている。皮膚常在菌としては圧倒的にコアグラーゼ陰性ブドウ球菌が多く、万一血液培養が偽陽性になればバンコマイシン投与となるため、常在菌混入による血液培養偽陽性がなくなれば必然的にはバンコマイシン投与が減ることとなり、バンコマイシン投与によるバンコマイシン耐性腸球菌の菌交代も起こりにくくなる。

 

同カテゴリの記事

2023.04.19
The impact of bedside wipes in multi-patient rooms: a prospective, crossover trial evaluating infections and survival

M. Dadon*, K. Chedid, E.T. Martin, I. Shaul, O. Greiver, I. Katz, H. Saadon, M. Alfaro, L. Hod, A. Shorbaje, A. Braslavsky-Siag, S. Moscovici, K.S. Kaye, D. Marchaim
*Tel Aviv University, Israel

Journal of Hospital Infection (2023) 134, 50-56


2020.03.31

Persistence of coronaviruses on inanimate surfaces and their inactivation with biocidal agents

G. Kampf*, D. Todt, S. Pfaender, E. Steinmann
*University Medicine Greifswald, Germany
Journal of Hospital Infection (2020) 104, 246-251

 

 

2023.06.02
Quantifying the reduction of airborne infectious viral load using a ventilated patient hood

L.Y.Y. Lee*, S.A. Landry, M. Jamriska, D. Subedi, S.A. Joosten, J.J. Barr, R. Brown, K. Kevin, R. Schofield, J. Monty, K. Subbarao, F. McGain
*University of Melbourne, Australia

Journal of Hospital Infection (2023) 136, 110-117


2021.07.31
eHealth for the prevention of healthcare-associated infections a scoping review

R.G. Bentvelsen*, E. Holten, N.H. Chavannes, K.E. Veldkamp
*Leiden University Medical Center, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2021) 113, 96-103


2023.11.30
Examining outpatients’ hand hygiene behaviour and its relation to COVID-19 infection prevention measures

S. Gaube*, K. Walton, A-K. Kleine, S. Däumling, C. Rohrmeier, S. Müller, E. Bonrath, W. Schneider-Brachert
*University College London, UK

Journal of Hospital Infection (2023) 141, 55-62




JHIサマリー日本語版サイトについて
JHIサマリー日本語版監訳者プロフィール
日本環境感染学会関連用語英和対照表

サイト内検索

レーティング

アーカイブ