院内感染の予防における手指衛生遵守:システマティックレビュー
Hand hygiene compliance in the prevention of hospital-acquired infections: a systematic review V. Mouajou*, K. Adams, G. DeLisle, C. Quach *University of Montreal, Canada Journal of Hospital Infection (2022) 119, 33-48
背景
医療従事者の手指は院内感染(HAI)の主要な伝播源として知られている。したがって、伝播リスクを減少させるため、手指衛生の実践および手指衛生ガイドラインの遵守の両方が求められる。しかし、医療従事者の手指衛生の最適な遵守率に関しては意見の一致が得られていない。
目的
発表された文献のシステマティックレビューを行い、最も低い HAI 発生率に関連する医療従事者の手指衛生遵守率の最適閾値を決定すること。
方法
本システマティックレビューは、Preferred Reporting Items for Systematic Review and Meta-Analysis ガイドラインに従って実施した。無作為化対照試験および非無作為化対照研究の包括的な検索基準を用いてオンラインデータベースを検索し、高所得国の医療施設において、医療従事者の手指衛生遵守率が全年齢の患者での HAI 発生率に及ぼす影響を検討した。
結果
スクリーニングした 8,093 報の論文タイトルおよび抄録のうち、35 報の論文を本レビューの対象とした。研究の多くは 1,000 患者日あたりの 全般的な HAI および 1,000 デバイス日あたりのデバイス関連の HAI について報告したものであった。研究の多くで、手指衛生遵守率は 60 ~ 70%の間と報告された。低い HAI 発生率は、約 60%の手指衛生遵守率により達成されるようであった。本レビューで対象とした研究は、もともと手指衛生遵守率が HAI 発生率に及ぼす影響を評価するためにデザインされたものではないが、バイアスのリスクはあらかじめ定められた曝露および結果の基準に従って評価した。11 報(31%)の研究はバイアスのリスクが低いと考えられた。
結論
手指衛生遵守は医療従事者の行動規範の一部であるが、非常に高い手指衛生遵守率に到達するのは難しい。観察研究では、手指衛生遵守と HAI は約 60%の手指衛生遵守まで負の関係にあった。研究デザインの欠陥によって、因果関係を推測することはできず、全体的な傾向のみを考察することができた。これらの制約を考慮すると、手指衛生遵守率の特定の目標値の実行を裏付けるためには質の高いエビデンスが必要である。
監訳者コメント:
60 ~ 70%以上の手指衛生の遵守率は達成困難であるが、逆にそれ以上の遵守率に達しても、医療関連感染の発生頻度はたいして減らないという。更なるエビデンスが必要といういつもの結論ではあるが、興味深い結果だ。
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