手指衛生遵守を促す:病院の面会者に対する大規模実地実験
Nudging hand hygiene compliance: a large-scale field experiment on hospital visitors P.G. Hansen*, E.G. Larsen, A. Modin, C.D. Gundersen, M. Schilling *Roskilde University, Roskilde, Denmark Journal of Hospital Infection (2021) 118, 63-69
背景
医療関連感染症は、医療提供時に最も高頻度で発生する有害事象で、世界中で何百万人もの患者が罹患している。標準予防策、とくに手指衛生のベストプラクティスの実施、およびその遵守を確実に行うことは、医療関連感染症を予防するための最も重要かつ安価な戦略の一つであると考えられている。しかし、病院において手指衛生の標準的実践の遵守率を高めようとする一貫した取り組みにもかかわらず、スタッフ、患者のみならず、面会者においても同様に遵守率は低いことが、研究により繰り返し示されている。
目的
行動科学研究により、手指衛生遵守などの望ましい行動を遵守するよう人びとを「促す」ために、見たところ関係のない文脈的特徴の調整が有望である可能性が示されている。著者らは、本実地実験において、そうした様々な特徴を変えることが、病院の入口における面会者の手指衛生遵守に及ぼす影響について検討した。
方法
50 日間にわたり、病院の面会者計 46,435 人を対象に、病院の入口における手指衛生遵守を、実地実験デザインを用いて観察した。このデザインでは、玄関ホールの手指消毒器に対して、目立つような特徴、設置場所、および確認について 8 つの異なるパターンを組み込み、これには毎年実施される全国手指衛生遵守キャンペーンの掲示および COVID-19 パンデミック時における追跡調査の実施などが含まれた。
結果
本実験の結果、見たところ関係のない様々な特徴により、手指衛生遵守がベースラインの 0.4%から 19.7%(COVID-19 パンデミック時は47.6%)に上昇したことが明らかになった。またこの実験から、全国手指衛生遵守キャンペーンは、手指衛生遵守に対して統計学的に有意な影響を直接的には及ぼさなかったことが示された。
結論
見たところ関係のない文脈的特徴を変えることにより、病院において自身の手指を洗浄することに関する手指衛生遵守率を高めるための、効果的、全般的、安価で、およびスケールアップが容易なアプローチが可能になる。
監訳者コメント:
少し前に大阪大学病院で真実の口を模したアルコール手指消毒器が話題になった。手指衛生などの様々な感染対策がなかなか遵守されないのは世界共通の悩みであるが、「ナッジ」という言葉に代表されるように、そっと無意識に働きかける手法がより広まり、開発されることを期待する。
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