重症 COVID-19 患者において真菌と細菌による同時感染は死亡率を高める★
Fungal and bacterial coinfections increase mortality of severely ill COVID-19 patients D.L. Silva*, C.M. Lima, V.C.R. Magalhães, L.M. Baltazar, N.T.A. Peres, R.B. Caligiorne, A.S. Moura, T. Fereguetti, J.C. Martins, L.F. Rabelo, J.S. Abrahão, A.C. Lyon, S. Johann, D.A. Santos *Universidade Federal de Minas Gerais, Brazil Journal of Hospital Infection (2021) 113, 145-154
背景
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス‐2(SARS-CoV-2)感染により、患者は二次感染に罹患しやすくなる。しかし、同時感染が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の転帰に及ぼす影響についてはさらなる解明が必要である。
目的
COVID-19 患者における同時感染による死亡リスクについて分析すること。
方法
重症 COVID-19 患者 212 例を対象に死亡のオッズを評価し、特に各病原体、感染部位、併存疾患、および入院期間の詳細に焦点を当てた。
結果
死亡率は 50.47%であった。真菌および/または細菌が分離されたのは患者 89 例で、このうち 83.14%が死亡した。同時感染患者は入院期間が長く、死亡のオッズが高かった(オッズ比[OR]13.45、R2 = 0.31)。死亡リスクが高かったのは細菌(OR 11.28)および真菌(OR 5.97)による同時感染の場合で、クレアチニン、白血球、尿素、およびC反応性蛋白の高値が伴っていた。同時感染により、患者が心血管疾患(OR 11.53)、糖尿病(OR 6.00)または肥満(OR 5.60)を有する場合は、これらの併存疾患を有していたが病原体が分離されなかった患者と比べて死亡リスクが高かった。死亡リスクの上昇は、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(OR 25.39)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)以外のカンジダ属菌(OR 11.12)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(OR 10.72)、アシネトバクター属菌(OR 6.88)、シュードモナス属菌(OR 4.77)、およびC. albicans(OR 3.97)で認められた。高リスクの感染部位は、血液、気管吸引物、および尿であった。侵襲的人工換気を受けている同時感染患者では、培養陰性の患者と比べて死亡率が 3.8 倍高かった。
結論
二次感染による同時感染を有する重症 COVID-19 患者は、長期の入院を要し、死亡リスクが高かった。高リスク患者を特定するため、また死亡を減らす正しい介入を明らかにするために、同時感染の早期診断が極めて重要である。
監訳者コメント:
COVID-19 患者の約 8 割は軽症で回復するが、残りの 2 割が悪化し、その 4 分の 1 が人工呼吸器装着など重症化することが知られている。重症化患者の多くが糖尿病、高血圧、肥満、腎臓病、心不全、慢性肺疾患などの基礎疾患を持ち、高齢者であることが報告されてきたが、高齢者へのワクチン接種とデルタ株などの変異株の流行により、40 ~ 50 歳代の患者の重症化が認められるようになり、人工呼吸器装着、ECMO 導入、尿道カテーテル、血管留置カテーテル挿入などの侵襲的医療処置が集中治療のために実施される。さらにステロイドなどの強力な抗炎症薬により、易感染性となり、本論文のように二次感染を発症し、入院期間の延長と予後不良の転帰となる。
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