QWERTY の汚染の程度は?コンピューターのキーボードから医療環境への病原体伝播のリスク

2021.06.30

How dirty is your QWERTY? The risk of healthcare pathogen transmission from computer keyboards

 

K. Ledwoch*, S.J. Dancer, J.A. Otter, K. Kerr, D. Roposte, J-Y. Maillard

*Cardiff University, UK

 

Journal of Hospital Infection (2021) 112, 31-36

 

 

緒言

医療環境表面は、医療関連感染症(HCAI)をもたらす微生物に汚染される可能性がある。患者周囲環境表面には特に注意が払われるが、患者区域外の場所はそれほど注意を向けられない。本稿では、キーボードの汚染ならびにキーボードからの病原体伝播のリスクに関するデータを提示する。

 

方法

病院 3 施設のナースステーションと歯科医院のキーボードの細菌汚染について分析した。あらゆる残存細菌がバイオフィルムと関連すると推定されるように、浮遊細菌の除去のために表面の前処理を行った。滅菌水または次亜塩素酸ナトリウムで拭き取り後、キーボードのキーからの細菌伝播について試験した。選択的培養により多剤耐性菌(MDRO)の存在を調べた。

 

結果

湿潤スワブ法では、キーボードのいずれの検体からも細菌が検出されなかったが、増菌培養により大部分の検体からMDRO が確認された。検体のほぼ半数(45%)からグラム陰性菌が回収され、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、バンコマイシン耐性腸球菌(enterococcus)、MDR アシネトバクター(Acinetobacter)属がそれぞれ、検体の 72%、31%、17%から回収された。滅菌水による拭き取り後、分離株は検体の 69%から移行し、1,000 ppm 次亜塩素酸ナトリウムによる拭き取り後、検体の 54%から移行した。

 

考察

湿潤スワブ法では、キーボードから細菌を検出できなかったが、増菌培養により病原体が回収された。滅菌水または次亜塩素酸ナトリウム含浸ワイプの使用により、大半の試験検体から細菌が移行した。本研究により、患者区域外にある院内キーボードには、移行可能な病原体のリザーバとなりうる乾燥表面バイオフィルムが存在する頻度が高いことが示唆される。伝播へのキーボードの関与は不明だが、キーボードから乾燥表面バイオフィルムの除去を図る効果的な対策を追求する必要がある。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

QWERTY とは、PC のキーボード配列の 1 種のこと。医療環境で使用される PC のキーボードは高頻度接触面にあたり、頻回の表面の清拭消毒が望ましいが現実的にはなかなか難しい。むしろ QWERTY は汚染エリアであると認識し、接触前後に必ずアルコール系手指衛生剤で手指衛生を実施することが望ましい。

 

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