感染制御における日光と自然換気の役割:これまでの研究と最新の展望

2013.08.31

Roles of sunlight and natural ventilation for controlling infection: historical and current perspectives


R.A. Hobday*, S.J. Dancer
*8 Springvale, Cwmbran, Torfaen, UK
Journal of Hospital Infection (2013) 84, 271-282
背景
屋内での感染は、世界的に疾患や死亡の主要な原因となっている。感染の伝播様式を理解することは公衆衛生上、重要であるが、屋内での伝播に関する現在の知識はまだ十分なものではない。
目的
医療環境での感染制御における自然換気と日光の役割についてレビューすること。
方法
図書館の電子データベースを用いて包括的な文献検索を行い、検索語「感染(infection)」、「リスク(risk)」、および「病原体(pathogen)」を含み、かつ「換気(ventilation)」、「外気(fresh air)」、および「日光(sunlight)」について言及している英語論文を抽出した。英語に翻訳されている外国語の論文も対象とし、発表年は限定しなかった。
結果
外気と日光は感染リスクを低下させると考えられていたため、これまでの病院は南向きのガラス窓、自然通風、および高い天井を備えた設計が行われていた。自然換気は空気感染する病原体の伝播に対して防御的に働くことが、過去および現在の研究から示唆されている。空気感染する病原体に対する感染制御実践の妥当性を証明するためには、粒子径、飛散特性、および伝播リスクに関する研究をさらに推し進める必要がある。日光により感染への抵抗性が増大し、また過去の研究では表面のコンタミネーション除去に日光が役割を果たしている可能性が示唆されている。
結論
粒子の種類やその伝播様式の定義について一致した見解が得られていないこともあり、屋内での病原体伝播に関する現在の知識は不十分なものである。自然換気の効果に関する過去のデータを支持する新しいエビデンスが得られているが、日光についてはそのようなエビデンスはほとんどない。快適さを追求した現代の医療機関の建物の設計は、病原体の残存に好適である。有効な抗菌薬の数が減少していることから、空気感染する病原体の絶対リスクを明らかにするため、また外気と日光の取り込みを増加することで得られると考えられる有益性を明らかにするために、さらなる研究が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
自然換気や日光消毒が有効か否か、を 194 の過去の論文から考察したレビューである。自然換気や直接の日光には一定の効果が見られた。その中で目を引いたのは、窓やドアを開けて換気することは、時に換気装置が目指している 1 時間あたり 12 回の換気を上回ることが報告されていたことだった。同時に、窓を開けることは真菌の流入を促すことにもつながることにも言及されていた。

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