血流感染症に対する抗菌薬処方の態度に影響を及ぼす因子:感受性試験の結果とそれ以外について。探索的調査★
Factors influencing antimicrobial prescription attitudes in bloodstream infections: susceptibility results and beyond. An exploratory survey
V. Anton-Vazquez*, C. Suarez, S. Krishna, T. Planche
*St. George’s University of London, UK
Journal of Hospital Infection (2021) 111, 140-147
背景
新規の迅速抗菌薬感受性試験法は、広域抗菌薬のより迅速な de-escalation を行ううえで有望である。しかし、抗菌薬処方に影響を及ぼすその他の行動および状況に関する因子については十分に知られていない。
目的
グラム陰性菌による血流感染症患者に対する最適な抗菌薬処方に関連する因子を探索すること、ならびに迅速な抗菌薬感受性検査結果が抗菌薬処方の最適化を助ける具体的なシナリオを提示すること。
方法
英国およびスペインにおいて、臨床症例に関する質問票を用いた探索的調査(2018 年 4 月から 8 月)を実施した。診療所の経験年数、診療科、および国籍を記録した。症例について、グラム陰性菌による血流感染症患者、その経験的抗菌薬療法および臨床経過、ならびに仮説上の迅速抗菌薬感受性検査結果を記述した。回答者は、抗菌薬療法管理に関する選択肢から 1 つを選ぶこととした。微生物学的に最適な抗菌薬の選択(MOAC)は、事前に専門家のコンセンサスにより同意を得ておいた。回答は「MOAC」、「支援の要請」、または「不適切な選択」のいずれかに分類した。迅速抗菌薬感受性検査結果と臨床経過との関係は、「一致」(感受性微生物‐臨床的改善、耐性微生物‐臨床的悪化)またはそうでなければ「不一致」に分類した。
結果
回答者計 426 名(英国:332 名、スペイン:94 名)および 回答計 1,494 件を分析した。多変量解析により、スペインでは「支援の要請」の割合が 87%少なかったこと、抗菌薬耐性と臨床的悪化はいずれも「支援の要請」の増加(それぞれオッズ比[OR]7.66 および OR 4.26)および「MOAC」の増加(それぞれ OR 2.08 および OR 2.06)と関連することが明らかにされた。「不一致」の臨床経過は、「MOAC」に分類されるオッズが 82%低いことと関連した。診療時間外に得られた検査結果、経験年数、および診療科による影響はなかった。
結論
抗菌薬の選択は、各国の診療所のタイプ、臨床経過、および抗菌薬感受性検査の結果により影響を受ける。抗菌薬耐性は最適治療の増加と関連しており、したがってベースラインの耐性率が低い場合には、迅速抗菌薬感受性検査は抗菌薬の step-down の決定において有用性が低い可能性が示唆される。
監訳者コメント:
細菌培養の結果が主治医に返却されるまでに4日程度かかるため、敗血症が疑われる患者においては、起炎菌を想定して適切な抗菌薬を経験的に選択することが必要となる。迅速な抗菌薬感受性結果が返却された場合に、検出された菌の感受性により主治医の処方がより適切な抗菌薬選択へ変更されることが期待される。本論文では4つの架空の症例、①急性腎盂腎炎、血液培養からAMPC感受性大腸菌、経験的投与のAMPC/CVAで改善、②急性腎盂腎炎、血液培養からESBL産生K.pneumoniaeが検出、経験的にAMPC/CVA+AMK投するが悪化傾向、③急性腎盂腎炎、血液培養から感受性P.mirabilis、経験的にAMPC/CVA+AMK投与するが悪化傾向、④急性胆嚢炎、経験的にAMPB/CVA+AMK、血液培養からESBL産生大腸菌で改善傾向、を提示し、これら症例に対して継続投与あるいはコンサルトや治療薬変更への対応を、ネット上でアンケート調査したものである。培養結果が耐性菌で悪化傾向の場合は、コンサルトや抗菌薬変更へと行動変容が見られたが、感受性の場合にはその動機付けが低いことが示唆されている。
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