カナダのオンタリオ州南部の高齢患者および医療施設入居者におけるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)保菌の疫学上および微生物学上の特性を調べる★★

2018.08.23

Examining the epidemiology and microbiology of Clostridium difficile carriage in elderly patients and residents of a healthcare facility in southern Ontario, Canada


G. Mallia*, J. Van Toen, J. Rousseau, L. Jacob, P. Boerlin, A. Greer, D. Metcalf, J.S. Weese
*University of Guelph, Toronto, Canada
Journal of Hospital Infection (2018) 99, 461-468
背景
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)は急性期病院においては広範に研究されてきたが、長期ケア施設(LTCF)については、推定されるリスク因子(例、年齢、抗菌薬使用、医療システムの利用など)の頻度が高いにもかかわらず、情報が限られている。
目的
急性期病院 1 施設およびその提携 LTCF の高齢患者および入居者における C. difficile 保菌を評価すること。
方法
LTCF 入居者および病院の高齢患者(65 歳超)884 例から便スワブ検体を採取した。選択的培養、PCR リボタイピングおよび毒素遺伝子分析を実施した。
結果
急性期病院では検体 410 個中 92 個(22.4%)、LTCF では検体 474 個中89個(18.8%)で C. difficile が回収された。LTCF ではリボタイプ 027(35%)およびリボタイプ 020(10.4%)が多かったのに対し、急性期病院ではリボタイプ AI-82/1(20.7%)およびリボタイプ O(14.1%)が多かった。LTCF では、C. difficile 保菌はプロトンポンプ阻害薬の使用歴、交互作用項として男性入居者と治療のための入院等による不在歴、およびフルオロキノロンの使用歴に関連した C. difficile 感染症(CDI)の既往が関連していた。急性期病院では、C. difficile 保菌は、在院期間、経管栄養、抗菌薬使用、免疫抑制療法およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)保菌と関連し、また交互作用項としてセファロスポリン使用とフルオロキノロン使用、CDI の既往とセファロスポリン使用、CDI の既往とフルオロキノロン使用の組み合わせと関連した。
結論
急性期病院患者および LTCF 入居者において、CDI の見かけ上の発生率は低いにもかかわらず、C. difficile 保菌が高頻度に認められた。プロトンポンプ阻害薬との関連が示されたことは、この広く使用されている薬物クラスが C. difficile 保菌において重要である可能性を示すさらなるエビデンスとなる。多様な遺伝的多様性が認められ、これにより C. difficile 獲得において未特定の複数の経路が存在する可能性が強調される。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
CDI は病院内で獲得し抗菌薬投与をきっかけに発症することが一般的であったが、リボタイプ 027 などの強毒株の北米での流行により、その疫学的状況は病院内外で共に変化している。これまで多くの研究が急性期病院において実施され、多くのことが明らかとなってきた。しかしながら、CD の無症候性保菌者が CDI の重要な要素であるにもかかわらず、長期療型施設(LTCF)における疫学的情報に関して十分なデータがない。本論文では、長期療養型施設での CD 保菌が 19%に達することが判明した。CDI 発症がまれであることから、CD 保菌が CDI 発症に保護的に作用している可能性を示唆するが、その病態生理については不明であり、保菌患者が院内あるいは施設内伝播における供給源となるため注意が必要である。また、急性期病院と LTCF の間での患者の移動が、高い CD 保菌率と関連しているかもしれない。また、CD 保菌にプロトンポンプ阻害薬(PPI)の服用も大きく影響している可能性が示唆され、高齢者への安易な PPI の処方に警鐘をならさなければならないだろう。

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