スコットランドの血液透析集団において血管アクセス法に焦点を置いた血流感染症の疫学
Epidemiology of bloodstream infections in a Scottish haemodialysis population with focus on vascular access method
K. Crowe*, B. White, N. Khanna, B. Cooke, D.B. Kingsmore, A. Jackson, K.S. Stevenson, R. Kasthuri, P.C. Thomson
*Queen Elizabeth University Hospital, UK
Journal of Hospital Infection (2021) 110, 37-44
背景
末期腎疾患の死因として感染症は 2 番目に多く、血液透析のための血管アクセスに関連する感染症がかなりの割合を占める。
目的
スコットランドの血液透析コホートにおける血管アクセスの種類別に、あらゆる原因による血流感染症(BSI)の発生率と抗菌薬耐性(AMR)について報告すること。
方法
2017 年に 7 カ所の血液透析室に通院した成人患者のデータの後向き解析を実施した。各血管アクセスの種類ごとに血液透析の合計日数を算出した。BSI を血液透析 1,000 日あたりの発生率で表して分析した。保健省微生物データベースにより AMR を確認した。
結果
汚染微生物によるBSIを除くと、BSI 全発生率は血液透析 1,000 日あたり 0.57 であった。あらゆる原因による BSI と血管アクセス関連感染による BSI の血液透析 1,000 日あたりの発生率は、非トンネル型中心静脈カテーテル(CVC)群でもっとも高く(それぞれ 3.11、2.07)、トンネル型 CVC(1.10、0.67)、動静脈グラフト(0.51、0.31)と続き、もっとも低いのは動静脈瘻(0.29、0.02)であった。血管アクセス関連感染以外による BSI 発生率は、動静脈グラフト群でもっとも低かった。BSI イベントの大部分でブドウ球菌(Staphylococci)が同定され、29%が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)であった。グラム陰性菌による BSI 発生率はとくに CVC 群で高く、高死亡率と関連した。多剤耐性(MDR)S. aureus とカルバペネム耐性菌は比較的少なかった。MDR グラム陰性菌は、スコットランドの集団と比較して多くみられた。
結論
あらゆる原因による BSI と血管アクセス関連感染による BSI の発生率は、動静脈瘻アクセスで最も低く、血管アクセス関連感染以外による BSI の発生率は、動静脈グラフトアクセスで最も低いことが確認された。ブドウ球菌は依然として広く分布するブドウ球菌属であるが、BSI へのグラム陰性菌の関与、死亡率がより高いことと、このグループにおける MDR 菌の割合は注目すべき結果である。
監訳者コメント:
透析における血流感染について調査した論文である。本邦においては、2016年に山下らが環境感染誌(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsei/31/5/31_15-048/_pdf/-char/ja)に多施設共同サーベイランスの成果を報告しているが、同様に、ブドウ球菌が最も多く同定されていた。
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