2回の季節性流行時のスイス南西部の病院における院内感染インフルエンザ:観察研究
Nosocomial influenza in south-western Swiss hospitals during two seasonal epidemics: an observational study
L. Qalla-Widmer*, D. Héquet, N. Troillet, C. Petignat, C. Balmelli, C. Bassi, C. Bellini, J.-P. Chave, A. Cometta, L. Christin, O. Clerc, O. Daher, U. Fuehrer, O. Marchetti, L. Merz, V. Portillo, G. Pralong, L. Sandoz, L. Senn, F. Tâche, A. Iten
*Public Health Service, Switzerland
Journal of Hospital Infection (2021) 109, 115-122
背景
スイスでは毎年、インフルエンザにより 112,000 件から 275,000 件の医療受診が発生する。院内感染インフルエンザに関するデータは限られている。
目的
スイス南西部における季節性インフルエンザの院内感染症例について記述すること。
方法
本研究を、2016 年から 2018 年の 2 回の季節性インフルエンザの流行時に、スイス南西部の公立急性期病院 27 施設で実施した。これらの 2 つの期間中に、72 時間を超えて入院し、インフルエンザについて RT-PCR または抗原検査で検査陽性を認めたすべての患者を本調査の対象とした。組み入れた患者の特性には、年齢、性別、および併存症などを含めた。組み入れた患者に対して、退院または死亡まで追跡調査を実施した。合併症およびノイラミニダーゼ阻害薬および/または抗菌薬の投与について記録した。
結果
医療従事者におけるインフルエンザワクチンの接種率の中央値は 40%であった。全体で、患者 836 例が含まれた(2016 年から 2017 年は A 型インフルエンザウイルスが98%、2017 年から 2018 年の B 型インフルエンザウイルスが77%)。ほとんどの患者(81%)では、ワクチン接種状況が不明であった。全体で、院内感染インフルエンザの発生率は入院 100 件あたり 0.5(1,000 患者日あたり 0.35)であった。もっとも多くみられた併存症は、糖尿病(20%)、慢性呼吸器疾患(19%)、および栄養不良(17%)であった。発熱(77%)および咳嗽(66%)は、もっとも多くみられた症状であった。患者の 71%がノイラミニダーゼ阻害薬、28%が抗菌薬の投与を受けていた。感染性合併症として肺炎などが、9%で報告された。全体で、全死因死亡率は 6%であった。
結論
院内感染インフルエンザの発生は、患者および医療従事者へのワクチン接種、市中感染または院内感染症例の迅速な認識、ならびに伝播拡大を予防するための十分な追加措置の実施(抗菌薬の使用・誤用を回避するための適時のノイラミニダーゼ阻害薬投与など)の重要性を示している。
監訳者コメント:
スイスからの報告で、医療従事者のインフルエンザワクチンの接種率が低いなど、日本とインフルエンザに対する対策が大きく異なる。
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