手指衛生のための電子リマインダーシステムに対する医療従事者の認識および受容★

2021.02.28

Healthcare workers’ perceptions and acceptance of an electronic reminder system for hand hygiene

P.-O. Blomgren*, B. Lytsy, K. Hjelm, C.L. Swenne
*Uppsala University, Sweden

Journal of Hospital Infection (2021) 108, 197-204

背景
医療関連感染症(HCAI)は、病的状態、死亡、および QOL に対して有害な影響を多大に及ぼす。スウェーデンにおいて、全入院患者の約 9%が HCAI に罹患している。手指衛生は、HCAI を低減する上で重要な役割を担っており、単独で最も重要な方策であると考えられている。病院組織は、HCAI を低減するために積極的に取り組んでいる。医療従事者に対してリマインドおよび/または通知を行う電子システムの導入は、手指衛生に関する認識を強め、その遵守を高める。しかし、そのようなシステムを実施することに対する個人の認識、および医療組織がどのように取り組んでいるかについて検討した研究は少ない。

目的
医療従事者を対象に、医療組織における感染予防に対する認識、ならびに手指衛生の改善を促す電子リマインダーシステムに対する認識と受容について検討すること。

方法
定性的記述式デザインを用いて、看護助手、看護師、および医師(N = 38)を含めた 8 つのフォーカスグループ面談においてデータを収集した。内容分析を実施し、計画的行動理論に基づいてデータを検討した。

結果
医療従事者は、病院組織からのフィードバックが欠けているという認識をもっており、電子リマインダーシステムによって手指衛生の遵守を強化することに対して前向きであった。電子リマインダーシステムは、経営側から管理のためのツールとして用いられるとスタッフにストレスをもたらす可能性があるため、個人レベルのデータを記録すべきではない。

結論
全体的に、電子リマインダーシステムに対しては肯定的な受容が認められ、回答者はこのシステムによって行動変容をもたらすことができるという認識をもっていた。しかし、このような考え方は、個々の道徳観念を保全するためにさらに改善すべきであり、グループレベルにおけるフィードバックにより用いる必要がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント
スウェーデンからの報告である。全入院患者の約 9%が一度は院内感染を経験しており、エビデンスに基づき実施される対策の中で、手指衛生は中心的に役割を担い、単一で最も効果的に微生物の伝播を遮断することができる。WHO は組織と個人の両者における行動変容を必要としており、教育、訓練、動機付け、システム改善などの多様な因子が影響する。これまで電子システムを利用して手指衛生を促すリマインダー機能が手指衛生の遵守率を改善することがすでに判明しているが、結果のフィードバックを個別にすることは「監視されている」という意識を高め、手指衛生改善への態度がマイナスに影響する可能性が本研究で示唆された。一方で、直接監視できないためホーソン効果を回避できる利点もあり、今後は職業別、部署別などのグループ単位での結果報告あるいは匿名化された報告により、現場の職員の遵守率向上が期待できる。

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