カナダ、オンタリオ州南部の病院の排水口におけるカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌★
Carbapenemase-producing Enterobacterales in hospital drains in Southern Ontario, Canada
A.J. Jamal*, L.F. Mataseje, K.A. Brown, K. Katz, J. Johnstone, M.P. Muller, V.G. Allen, S. Borgia, D.A. Boyd, W. Ciccotelli, K. Delibasic, D.N. Fisman, N. Khan, J.A. Leis, A.X. Li, M. Mehta, W. Ng, R. Pantelidis, A. Paterson, G. Pikula, R. Sawicki, S. Schmidt, R. Souto, L. Tang, C. Thomas, A.J. McGeer, M.R. Mulvey
*University of Toronto, Canada
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 820-827
背景
病院内の排水口はカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(CPE)の重要なリザーバの可能性がある。
目的
CPE を保有する患者に曝露された病院内排水口における CPE の検出率、排水口と患者に由来する CPE の関係性、および排水口汚染のリスク因子を明らかにすること。
方法
病院 10 施設で、CPE 保菌/感染を有する患者310例に曝露された病室および共用シャワー室のシンクおよび排水口について、培養を行った。ショートリードおよびロングリード全ゲノムシークエンシングを用いて、入院患者と、対応する排水口の CPE を比較した。排水口汚染のリスク因子を、マルチレベルモデリングにより評価した。
結果
曝露された病室および共有シャワー室の排水口 1,209 個のうち、病院 7 施設(70%)の 53個(4%)から CPE 分離株 62 株が回収された。病室の排水口から得られたCPE 分離株 49 株のうち、4 株(8%)に病室の過去の入院患者との関係が認められた。関係が認められた排水口/病室入院患者の組み合わせには、8 つの一塩基バリアントにより分離されたシトロバクター・フレウンディー(Citrobacter freundii)ST18 分離株、関係がある blaKPC 含有 IncN3 型プラスミド(異なる種)、関係がある blaKPC-3 含有 IncN 型プラスミド(異なる種)、ならびに関係がある blaOXA-48 含有 IncL/M 型プラスミド(異なる種)が含まれた。病院 1 施設では、2 病棟の 8 室の排水口から得られた分離株が、0 ~ 6 つの一塩基バリアントにより分離されたエンテロバクター・ホルメシェイ(Enterobacter hormaechei)であった。シャワー室の排水口では、手指衛生用(オッズ比[OR]3.45、95%信頼区間[CI]1.66 ~ 7.16)または患者用(OR 13.0、95%CI 4.29 ~ 39.1)のシンク排水口と比べて、CPE 汚染の割合が高かった。手指衛生用シンク排水口では、患者用シンク排水口と比べて(OR 3.75、95%CI 1.17 ~ 12.0)、CPE 汚染の割合が高かった。
結論
排水口の汚染はまれであったが、広範に拡散していた。患者曝露と関係のない排水口で CPE が認められたことは、発見されていない保菌患者による汚染、または逆行性(排水口から排水口)の汚染の存在が示唆される。排水口のタイプによって、汚染リスクが異なっていた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
腸内細菌目細菌のカルバペネマーゼ産生菌を排水口から検出している論文であるが、患者が在室あるいは使用したシャワールームあるいはシンクの排水口から検出されることは予測できる。これらは耐性菌を保有する患者が使用した結果であって、このことがその後のこれらの病院における感染拡大の原因となるかどうかについては不明である。しかしながら、いくつかの報告では排水口の耐性菌により感染拡大が起こり、排水口の処理やドレーンパイプの殺菌消毒により、終息したとの報告もあり、今後のさらなる調査研究が待たれる。
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