SARS-CoV-2 代用ウイルスで汚染されたサージカルマスクおよびN95 相当レスピレータの汚染除去をするための殺菌用紫外線、過酸化水素蒸気、および乾式加熱の使用★

2020.11.30

The use of germicidal ultraviolet light, vaporized hydrogen peroxide and dry heat to decontaminate face masks and filtering respirators contaminated with a SARS-CoV-2 surrogate virus
L.F. Ludwig-Begall*, C. Wielick, L. Dams, H. Nauwynck, P-F. Demeuldre, A. Napp, J. Laperre, E. Haubruge, E. Thiry
*Liège University, Belgium
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 577-584


背景
現在進行中の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)パンデミックを背景として、個人防護具の供給が依然として大きく抑制されている。この問題に取り組むため、サージカルマスクおよび N95 相当レスピレータの再使用が推奨されている。これらのマスクにおいて、再使用前の汚染除去は、再使用するにあたり不可欠である。
目的
著者らは、3 種類の汚染除去法によりブタ呼吸器コロナウイルス(PRCV)で汚染させたサージカルマスクおよび N95 相当レスピレータで得られる効果に関する情報を提供することで、通常単回使用のみのこれら製品に対する感染性コロナウイルスによる汚染除去のための安定したモデルを提示することを目的とした。
方法
サージカルマスクおよび N95 相当レスピレータのサンプル片およびストラップに感染性 PRCV を播種し、3 種類の汚染除去処理、すなわち紫外線照射、過酸化水素蒸気、および乾式加熱による処理を行った。ウイルスの回収をサンプル材料から行い、ウイルス力価をブタ精巣細胞で測定した。
結果
紫外線照射、過酸化水素蒸気、および乾式加熱により、感染性 PRCV にサージカルマスクおよび N95 相当レスピレータのサンプル片で 3 桁を超える減少がみられ、すべての汚染除去検査において検出不能となった。
結論
本稿は、感染性の SARS-CoV-2 代用ウイルスにより汚染されたサージカルマスクおよび N95 相当レスピレータに対して、紫外線照射、過酸化水素蒸気、および乾式加熱を用いた処理により安定した汚染除去効果が得られた初の報告である。これら 3 種類の方法により、感染性コロナウイルスに 3 桁を超える減少がみられることを示すことができ、この結果はサージカルマスクおよび N95 相当レスピレータに関する米国食品医薬品局(FDA)の方針に沿ったものである。本稿は操作の簡易性と、BSL2 実験室で使用できるという利点を示しており、したがって他の種類のサージカルマスクやマスクにも適用が容易である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
本論文では、フェイスマスクと N95 相当レスピレータの紫外線照射、過酸化水素蒸気、および乾式加熱による汚染除去効果について検討され、その有効性が確認されているが、これらの処理後のマスクの防御性能についての評価や何度までこの工程が実施可能なのかについては検討されていない。すでに N95 については再使用方法が厚労省より提示されている(https://www.mhlw.go.jp/content/000621007.pdf)が、サージカルマスクの再使用については現時点では推奨されていない。
訳者注)Filtering Facepiece Respirator とは、米国 N95 または EU 規格 FFP2、FFP3 を指す、ここでは「N95 相当レスピレータ」と訳している。

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