緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)およびバイオフィルム制御という観点から自動水栓のエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)の代替物質を検討する
Investigating alternative materials to EPDM for automatic taps in the context of Pseudomonas aeruginosa and biofilm control
C.F. Hutchins*, G. Moore, J. Webb, J.T. Walker
*Public Health England, UK
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 429-435
背景
自動水栓は、水流を制御するためにゴム製(主にエチレンプロピレンジエンモノマー[EPDM])ダイヤフラムを備えた電磁弁を使用している。汚染した電磁弁は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)などの日和見病原菌のリザーバ(医療関連感染症の重要な原因)となりうる。
目的
実験モデルでEPDM および適切な代替ゴム製品への緑膿菌の付着とバイオフィルム形成について検討し、水質衛生への影響を評価すること。
方法
疾病対策センター(CDC)のバイオフィルムリアクターを用いて、EPDM、シリコン、ニトリルゴムのクーポン上のバイオフィルム形成について試験した。EPDM またはニトリルゴム製のダイヤフラムを備えた電磁弁を実験用配水システムに取り付け、緑膿菌を播種した。水サンプルの緑膿菌の濃度を 12 週間観察した。ダイヤフラム(EPDM、シリコン、または銀イオン浸透シリコンゴム)を備えた電磁弁を、緑膿菌定着前に取り付け、制御策としてのフラッシングの影響を調べた。水サンプルの緑膿菌の濃度を培養により評価し、バイオフィルムを培養と顕微鏡により評価した。
結果
細菌の付着は、ニトリルゴム(6.2 × 105 cfu/クーポン)およびシリコンゴム(5.4 × 105 cfu/クーポン)が、EPDM(2.9 × 105 cfu/クーポン)よりも有意に多かった(P < 0.05、17 サンプル)。in vitro で得られた結果は、実験用排水システムのいずれの結果にもつながらず、in situ で 12 週間後、水サンプルの緑膿菌の濃度、バイオフィルムにおける緑膿菌の濃度のいずれにも有意差はなかった。フラッシングを行い、5 分未満の止水後に細菌数のわずかな減少がみられた。
結論
本研究では、EPDM と(現在利用できる)代替ゴム製品との取り換えを支持するエビデンスは得られず、水栓から供給される最初の水道水は、医療環境での使用を避けるべきであることが示された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
配水系の汚染について、電磁弁に着目して検討した論文である。使用可能な代替え素材で効果的なものはみつからずに、最初に捨て水をするくらいのことしかないという結論である。予防的に配管系高温水を流したり、ダクトを加熱するなどエンジニアリングによる改良を行わないと予防的にはならないだろう。
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