抗菌薬適正使用支援における看護師への権限委譲:社会生態学的定性分析
Empowerment of nurses in antibiotic stewardship: a social ecological qualitative analysis
L.H. Wong*, M.A. Bin Ibrahim, H. Guo, A.L.H. Kwa, L.H.W. Lum, T.M. Ng, J.S. Chung, J. Somani, D.C.B. Lye, A. Chow
*Tan Tock Seng Hospital, Singapore
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 473-482
背景
不適切な抗菌薬使用および抗菌薬耐性(AMR)は、大いに懸念される世界的な健康問題になりつつある。多くの国で抗菌薬適正使用支援プログラム(ASP)が確立されているにもかかわらず、看護師を関与させ ASP における役割を明確にするための取り組みは限定的である。
目的
抗菌薬適正使用支援における看護師の関与と権限委譲に影響する促進役と障壁を理解するため、探索的定性的研究を実施した。
方法
シンガポールの主要な公立病院 3 施設から有意抽出した看護師を対象に、フォーカスグループ・ディスカッションを実施した。フォーカスグループ・ディスカッションは録音して文字化した。データは応用主題分析を用いて分析し、社会生態学的モデルを用いて解釈した。
結果
個人内のレベルでは、看護師は抗菌薬投与において彼らの役割を遂行することに権限が与えられていると感じていた。看護師は自らを、処方された抗菌薬が確実に適切に投与されるようにする門番役と見なしていた。しかし、看護師は抗菌薬使用と AMR 予防における知識と専門技能が不足していると感じていた。外来患者の安全への懸念と抗菌薬投与の提案が表明されている場合、個人間のレベルでは、この抗菌薬使用における知識と専門技能の不足は、患者と介護者に彼らがどのように認識されているかだけでなく彼らのプライマリケアチームとのやりとりにも影響を及ぼした。組織のレベルでは、看護師は適切な抗菌薬投与を確実にするため、また彼らの診療について医師が質問した場合の安全策として、薬剤投与のガイドラインに頼っていた。地域社会のレベルでは、看護師は一般住民の抗菌薬使用に関する認識と知識は不足していると感じていた。
結論
これらの結果により、看護師の貢献を生かし ASP における彼らの役割を公式に認め拡大する重要な知見がもたらされた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
日本を含む諸外国で、すでに看護師が ASP に直接関わりその役割を果たしている。経験、教育に加え、制度の整備が重要と思われた。
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