クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の分類法により病院獲得感染症の発生率が過大に推定される★

2018.08.23

Clostridium difficile classification overestimates hospital-acquired infections


A. McLure*, A.C.A. Clements, M. Kirk, K. Glass
*Australian National University, Australia
Journal of Hospital Infection (2018) 99, 453-460
背景
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症は、一部の病院獲得型あるいはその他の市中獲得型の感染症とともに、入院患者での発生率が高い。国際ガイドラインでは、入院後 2 日を超えて症状発現が生じた場合に、その症例を病院獲得型に分類する。この分類法は、サーベイランスおよび感染制御のための情報を提供するが、これまでに実証的研究またはモデル化研究によってその妥当性が確認されていない。
目的
C. difficile 感染症獲得に関する現在の分類法を、シミュレーションモデルを参照標準として用いて評価すること。
方法
C. difficile の伝播を、様々な病院環境のシナリオでシミュレーションした。0.25 時間から 40 日間の範囲におけるカットオフを用いて、分類法の感度、特異度および精度を算出した。病院獲得型であった症例の割合を正確に推定した最適なカットオフ、ならびに同等の感度と特異度を有するバランスの良いカットオフを特定した。
結果
推奨されている 2 日というカットオフは、すべてのシナリオにおいて、またベースシナリオでは、100%を超えるところ(>100%)において、病院獲得型症例の発生率を過大に推定した。現在の入院中に獲得された症例の同定において、2 日というカットオフは良好な感受性(96%)を示したが、特異度(48%)と精度(52%)が低かった。ベースシナリオでは 5 日というカットオフがバランスが良く、6 日というカットオフが最適であった。検討したほぼすべてのシナリオにおいて、最適なカットオフおよびバランスの良いカットオフは 2 日を超える場合であった(範囲:それぞれ4 ~ 9日および2 ~ 8日)。
結論
C. difficile 感染症を分類するための現行のガイドラインは、すべてのモデルシナリオにおいて、病院で獲得された症例の割合を過大に推定する。誤分類バイアスを低減するために、入院後 5 日以内に症状が発現している場合、その感染症は入院前に獲得されたものと分類すべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
これまで入院 48 時間を越えた場合の発症を病院内獲得による C.difficile 感染症(以下 CDI)として疫学統計上の基準が設定されていたが、CDI の潜伏期が不明であるものの、これまでの報告では入院後から発症までの中央値は 2 週間前後とされており、現在の基準では市中感染をし入院中に発症した CDI 例も病院内獲得として過剰に算出されている可能性が高い。本論文では数学的モデルを使って、適切な感度、特異度、精度を設定することを試みたところ、入院後 6 日をカットオフとすることで、病院内獲得と判定できるとしている。また、過去の報告では病院内獲得と判断された CDI の 20%前後が、真の施設内伝播であるとされており、今後 CDI の疫学統計上の定義の見直しが必要であろう。

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