手術室における皮膚への細菌の再定着:様々な消毒プロトコール間の比較

2020.09.30

Bacterial skin recolonization in the operating room: comparison between various antisepsis protocols
L. Rouquette*, O. Traore, S. Descamps, S. Boisgard, G. Villatte, R. Erivan
*Université Clermont Auvergne et associés, France
Journal of Hospital Infection (2020) 106, 57-64


背景
手術部位感染症(SSI)は患者の皮膚の内因性細菌叢に大いに関係する。手術前後の消毒プロトコールは一般的な合意に従っていない。
目的
手術室における微生物の皮膚への再定着について経時的に定量的に評価し、消毒と皮膚の保護のプロトコールを比較すること。本研究の仮説は、ある 1 つのプロトコールが他のものより効果的だろうということであった。
方法
2019 年 1 月から 6 月の間に単一施設前向き介入研究を実施した。健康ボランティアが各プロトコールに無作為に割り付けられ、またボランティア自身の対照群としての役割を果たした。プロトコールは予定された整形外科手術よりも先に手術前のシャワーから開始され、機械的洗浄、主要な消毒薬の塗布(alcoholic BétadineTM 5%またはクロルヘキシジンアルコール 0.5%)、滅菌ドレーピング、その後、粘着ドレーピング(3MTM Steri-DrapeTM またはヨウ素含浸 3MTM Ioban2TM)が行われた。サンプル採取は手術室において 30 分間隔、ドレーピング後 90 分 までの拭き取りによって行った。培養は好気条件下と嫌気条件下で行った。定性的および定量的(cfu/mL)な細菌学は検査室で血液寒天培地を直接読み取って行った。
結果
30 例の被験者が含まれ、追跡調査不能となったり分析から除外された被験者はいなかった。処置前(T0)の細菌数は、シャワーからサンプル採取までの間隔が有意に短い(P = 0.03)にもかかわらず男性において有意に多かった(P < 0.0001)。喫煙(P = 0.85)、体格指数(P = 0.38)、脱毛(P = 0.50)は手術前の細菌数に有意に影響しなかった。すべてのプロトコールにおいて 90 分(T90)まで細菌数の平均値は有意に増加し、いずれか 1 つのプロトコールが有意に優れているということはなかった。BétadineTM と Ioban2TM 併用時の T90 の細菌数が最も少なく、クロルヘキシジン単独は最も多かったが、有意差はなかった。T0 の分離菌は健康な皮膚の主な共生生物であるコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negative staphylococci)、小球菌(micrococci)、コリネ型細菌(coryneforms)であった。
結論
手術室での即時の殺菌作用においても、皮膚への再定着の予防においても、優位性を示したプロトコールはなかった。SSI のリスク管理に関する一般的に合意されたプロトコールを明らかにするため、さらなる研究が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
手術患者において、手術創部を洗浄・消毒した後の細菌再増殖について、プロトコール毎に差がないか検討した研究であるが、プロトコール同士で有意差は認めなかった。症例数も十分とはいえないが、プロトコールの内容というより、まずは市販されている石けんや消毒薬を用いて処置することそのものが重要であるということを示唆する結果と考えられる。

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Journal of Hospital Infection (2022) 122, 126-132




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