化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenesemm75 による産後感染症のアウトブレイクの管理

2020.08.31

Management of an outbreak of postpartum Streptococcus pyogenes emm75 infections
K. Trell*, J. Jörgense, M. Rasmuss , E. Senneby
*Lund University, Sweden
Journal of Hospital Infection (2020) 105, 752-756


背景
化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)は、良く知られた産後感染症の原因であり、かなりの病的状態および死亡の原因となっている。
目的
産科病棟において S. pyogenes emm75 が原因となった産後感染症のアウトブレイクを制御するために実施された方策について記述すること。
方法
産後に感染症の徴候および症状を呈した患者を対象に、子宮頸部スワブおよび血液培養によってβ溶血性レンサ球菌の培養を行い、細菌分離株についてマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS)により細菌種を同定し、emm 型を決定した。産科病棟の医療従事者から咽頭スワブを採取した。細菌分離株に対して全ゲノムシークエンシングを実施した。複数部位塩基配列タイピングおよび一塩基多型(SNP)数を明らかにし、指標ゲノムと比較した。
結果
3 か月のアウトブレイク期間中に、産科病棟で S. pyogenes emm75 による産後感染症 6 症例が同定された。分娩日と業務ローテーションを比較したところ、医療従事者 1 名が、5 症例の感染源である可能性が判明した。この医療従事者に対して咽頭スワブを再実施したところ、S. pyogenes emm75 が分離された。患者から分離された 5 株は、この医療従事者の分離株と疫学的に関連しており、その家族の分離株 2 株は同じ配列型(ST49)であり、医療従事者自身の分離株との SNP 数の差は 0 ~ 2 であったのに対し、6 番目の患者の分離株には関連は認められなかった。保菌者に対し、クリンダマイシンとリファンピシンによる根絶抗菌薬療法が実施された。全患者が静注抗菌薬療法を受け、回復した。
結論
3 か月にわたるアウトブレイクは、保菌者を同定して治療することで終息した。感染源の同定と全ゲノムシークエンシングが、アウトブレイク制御にとって重要であることが示された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
A 群溶連菌(S. pyogenes)はあまり知られていないが家庭内感染や病院内アウトブレイクの原因となることがある。本研究は 6 例の同一 S. pyogenes による産後患者のアウトブレイクに関する報告である。

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