エビデンスの強さはどこに?感染予防・制御のためのガイドラインのレビュー★

2020.06.30

Where is the strength of evidence? A review of infection prevention and control guidelines
B.G. Mitchell*, O. Fasugba, P.L. Russo
*University of Newcastle, Australia
Journal of Hospital Infection (2020) 105, 242-251


医療における安全性と質の重要な側面は、感染予防・制御のためのガイドラインの実施である。しかし、このガイドラインの推奨事項の基礎となるエビデンスの強さについては、ほとんど知られていない。本研究の目的は、過去 10 年間に発表された感染予防・制御のためのガイドラインの推奨事項の強さについて示すことである。このレビューでは、国内および国際的な感染予防・制御の臨床ガイドラインに関して、政府および専門機関のウェブサイトを目的に沿って検索した。検索は 2009 年 1 月から 2019 年 4 月の公表文献に限定し、推奨事項を支持するエビデンスの強さを決定するために、正式な分類システムを用いた文献を使用した。ガイドラインの推奨事項を 21 の感染制御カテゴリーに分類した。データの記述的統合を実施した。
1,855 の推奨事項から成る計 31 件のガイドラインを対象とした。ガイドラインは主に米国(11 件、35.5%)とカナダ(9 件、29.0%)で作成された。多くのガイドラインで、Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation(GRADE)アプローチが使用された(6 件、19.4%)。大多数のガイドラインが、デバイス(316 件、16.9%)、感染経路別予防策(315 件、16.8%)の主題に従ってカテゴリー分類された推奨事項を含んでいた。大半の推奨事項(769 件、41.5%)は、記述的研究によるエビデンス、専門家の見解、質の低いエビデンスによってグレード分類された。
国内および国際的な政府機関または専門機関により作成された膨大な数の感染予防・制御のためのガイドラインがあり、多くが強固なエビデンスに基づくものではなかった。このことは、現時点ではエビデンスの質が低い一般的な予防活動について優先的に取り組むべき研究の機会が多いことを示している。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
2010 年前後以降、感染予防のための各国の公的ガイドラインは GRADE 等の体系的な質評価方法を重要視してきた。一方でガイドラインに引用される論文には研究デザインには問題がなくても症例数や処置内容に人的要因が関わるために、データが真反対の結論を導き出している場合もあり解釈に慎重さを要する場合もある。

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