急性期病院レベルにおけるWHO Infection Prevention and Control Assessment Frameworkの検証★★

2020.05.23

Testing of the WHO Infection Prevention and Control Assessment Framework at acute healthcare facility level
S. Tomczyk*, S. Aghdassi, J. Storr, S. Hansen, A.J. Stewardson, P. Bischoff, P. Gastmeier, B. Allegranzi
*World Health Organization, Switzerland
Journal of Hospital Infection (2020) 105, 83-90


背景
モニタリングおよび評価は、感染予防・制御の実施における不可欠の部分である。著者らは Infection Prevention and Control Assessment Framework(IPCAF)を開発し、急性期医療施設における感染予防・制御プログラムの中核要素に関する世界保健機関(WHO)のガイドラインを促進することを試みた。
目的
IPCAF ツールの世界規模での使用における有用性および信頼性を評価すること。
方法
IPCAF は、WHO の 8 つの中核要素に従って感染予防・制御の実施レベルを評価するための質問票とスコア判定法から成る。同ツールについて、事前に定性的評価を実施して改訂を行い、選択した言語に翻訳した。病院の便宜的サンプルに対して、最終的な検証への参加を呼びかけた。各病院において 2 名以上の感染予防・制御専門家が、独立して IPCAF および有用性質問票にオンラインで回答した。同ツールについて内的一貫性および観察者間信頼性、あるいはクラス間相関係数を評価し、有用性質問票の結果を記述的に要約した。
結果
合計で、46 カ国、病院 181 施設、および 324 名の個人が参加した。回答者のうち、52 名(16%)が低所得国、55 名(17%)が低中所得国出身だった。回答者の 52%は、IPCAFを 1 時間以内で記入した。全体として、内的一貫性は十分であり、クラス間相関係数は高かった(0.92、95%信頼区間 0.89 ~ 0.94)。10 項目の質問は信頼性が低く(クラス間相関係数< 0.4)。これらの項目については、有用性に関するフィードバックと専門家の意見に従って、改訂を検討した。
結論
WHO IPCAF について、頑健な多国間研究により検証を行い、必要に応じて改訂した。それにより、同ツールは医療施設における感染予防・制御の改善にとって効果的なものとなった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
感染予防対策活動の内容を定量的評価(点数化)することは重要で、まず現状を評価した後に改善点を含め次期活動を計画し、計画実施後に再度評価し、実施前と比較することで、病院の感染対策の質改善につながる、すなわち PDCA サイクルを回すことである。2017 年に作成されたこの WHO の IPCF は、急性期病院のためのツールであり、8 つの主要項目(コアエレメント:CC)から構成されている。CC は自由記載はなくクローズドの質問形式で、各項目 100 点満点となっている。具体的に、①感染予防策のプログラム(ICP チームに最低 1 名の専従者、対策委員会の積極的サポート、微生物検査室の信頼性など)②ガイドライン作成(手指衛生、感染経路別対策、カテーテル関連血流感染防止、感染性廃棄物、ガイドライン遵守状況調査など)、③教育訓練(専門家による教育訓練、定期的な職員教育、清掃業者や患者ケアに関与する職員の定期的教育、教育プログラムの効果判定)、④サーベイランス実施(SSI、デバイス関連、特定部門[ICU/NICU]など)など)、⑤多方面からの感染対策実施に関する戦略と介入(システム変更、教育訓練、監視とデータ還元、安全文化など)、⑥実践現場での監査と還元(明確な目標を掲げた計画実施状況の監視、監視項目の職員への明示、手指衛生自己評価など)、⑦仕事量・人員・ベッド占有率(適切な人材配置、国際基準に準拠した病棟設計、ベッド間隔など)、⑧設備と環境、器材(水道の水質、手指衛生設備、室内換気など)があり、これらを自己評価することで自身の病院の感染対策が組織的に動いているかを確認できるので、是非一読することをお薦めする。

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