全ゲノムシークエンシングによって病院 1 施設のいくつかの場所にある複数の洗面台の U 字管において関連性が高い緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)株が同定される:排水パイプを経由した潜在的な病原体の輸送のエビデンス

2020.04.28

Whole-genome sequencing identifies highly related Pseudomonas aeruginosa strains in multiple washbasin U-bends at several locations in one hospital: evidence for trafficking of potential pathogens via wastewater pipes

 

E.M. Moloney*, E.C. Deasy, J.S. Swan, G.I. Brennan, M.J. O’Donnell, D.C. Coleman
*Dublin Dental University Hospital, University of Dublin, Ireland

 

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 484-491

 

 

背景
手洗い用の洗面台の U 字管は、実質的に U 字管の至る所に存在する緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を含む、グラム陰性菌による院内アウトブレイクとの関連性が高まっている。U 字管を引き込む排水ネットワークは、病原性細菌を輸送する経路である可能性がある。

 

目的
緑膿菌を用いて病院の洗面台の U 字管の間の細菌の輸送を調査すること。

 

方法
緑膿菌の輸送を調査するため、ダブリン歯科大学病院の 5 カ所にある 25 個の洗面台の U 字管(外来診療所 2 において 10 個、救急救命科において 10 個、他の 3 つの場所において 5 個)を調査した。さらに、洗面台の蛇口のサンプル(N = 80)および本管から引き込んだ水道と水道水のサンプル(N = 72)から、緑膿菌の培養を行った。29 か月にわたって回収され選択された緑膿菌分離株について全ゲノムシークエンシングを行い、関連性は全ゲノム multi-locus sequence typing(MLST)法とペアワイズ一塩基多型(SNP)解析を用いて判断した。

 

結果
緑膿菌はすべての U 字管から回収されたが、蛇口や水からは回収されなかった。83 の U 字管分離株は 10 のシークエンス型(ST)をもたらし、救急救命科、外来診療所 2 および他の 2 つの場所由来の ST560 と ST179 が優勢であった(70%)。ST560 は共通の下流管からも回収された。ST560 内と ST179 内の分離株は供給源にかかわらず関連性が高かった。ST560 はクラスター I(N = 25)とクラスター II(N = 2)に分けられ、対立遺伝子の差異および SNP の平均値はそれぞれ 3 と 0、2 と 5 であった。31 の ST179 分離株は、対立遺伝子の差異および SNP の平均値としてそれぞれ 3 と 12 を示した。

 

結論
ダブリン歯科大学病院のいくつかの場所の複数の U 字管において関連性の高い緑膿菌株が同定され、排水ネットワークを経由した輸送が示された。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント
1病院の5か所から25個のU字管の汚染を調査した論文である。結果としてすべてのU字管から緑膿菌が検出され、排水ネットワークを伝わって拡散した可能性が示唆された。有効な方法による定期的な排水管の消毒が必要だと思われた。

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