外来静注抗菌薬療法の実施および拡大に対する阻害因子と促進因子:システマティックレビュー

2024.05.31

Barriers and facilitators for the implementation and expansion of outpatient parenteral antimicrobial therapy: a systematic review

S.A. Mohammed*, M.O. Cotta, G.M. Assefa, D. Erku, F. Sime
*The University of Queensland, Australia

Journal of Hospital Infection (2024) 147, 1-16





近年、外来静注抗菌薬療法は拡大傾向にあり、病床の不足を軽減するための実行可能な解決策となっている。しかしながら、外来静注抗菌薬療法の広範にわたる実施は多くの課題に直面している。本レビューの目的は、外来静注抗菌薬療法サービスの実施の阻害因子と促進因子を評価することである。PubMed、Scopus、MEDLINE、EMBASE、CINAHL、Cochrane Library、Web of Science Proceedings、International Pharmaceutical Abstracts、PsycINFO を用いて、外来静注抗菌薬療法サービスの阻害因子と促進因子について報告した研究を抽出した。英語で発表されたあらゆる種類の研究デザインを含めた。除外した研究は以下の通りで、阻害因子と促進因子のいずれにも言及していない、外来静注抗菌薬療法と入院静注抗菌薬療法を区別していない、特定の抗菌薬または疾患に焦点を置いている、および静注治療と他の治療の区別をしていないものであった。最適なフレームワークアプローチおよび実装研究のための統合フレームワーク(CFIR)を用いた定性分析を実施した。レビューは PROSPERO に登録した(CRD42023441083)。計 8,761 報の研究において適格性をスクリーニングし、147 報を対象とした。患者選択、認識の欠如、コミュニケーションおよび協調性の不良、支援の欠如、構造化サービスの欠如、ならびに不適切な処方などの問題が特定された。外来静注抗菌薬療法は安全で、有効かつ効率の良い治療であり、患者のプライバシーや安心感を保ち、日常生活の乱れは少なく、感染リスクを軽減する。外来静注抗菌薬療法に対する満足感と優先傾向は非常に高かった。外来静注抗菌薬療法を補強するに際して、抗菌薬適正使用支援および遠隔治療などの取り組みは有益である。患者、医療専門家、外来静注抗菌薬療法サービス提供者、および医療管理者において、外来静注抗菌薬療法の課題と促進因子が明らかにされた。外来静注抗菌薬療法サービスの実施の成功を目指して目標とする取り組みを計画するために、課題と促進因子を理解することがきわめて重要である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

OPAT(外来静注抗菌薬療法)は、感染性心内膜炎や椎体炎、肺膿瘍など様々な膿瘍系疾患など、治療期間が数週から数か月にわたる感染性疾患で抗菌薬の静注療法を目的とした長期入院を回避するために期待されている治療である。しかし本論文が示すように様々な理由で十分に利用されていない現状がある。日本には日本特有の理由や状況もあると考えられ、日本でも同様の研究が必要であろう。

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