日本の入院患者におけるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症のリスク因子および関連する死亡率:多施設前向きコホート研究★★

2020.03.31

Risk factors for Clostridioides difficile infection in hospitalized patients and associated mortality in Japan: a multi-centre prospective cohort study

H.Honda*, H. Kato, M.A. Olsen, K.A. Reske, M. Senoh, T. Fukuda, Y. Tagashira, C. Mahe, E.R. Dubberke, the Clostridioides difficile infection Japan study group
*Tokyo Metropolitan Tama Medical Center, Japan

Journal of Hospital Infection (2020) 104, 350-357

背景

集団の特性と抗菌薬処方実践から、日本の入院患者集団ではクロストリジウム・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症(CDI)のリスクが高いことが示唆されるが、日本における CDI の疫学については十分理解されていない。

 

目的

本前向きコホート研究の目的は、日本の病院 12 施設における CDI の疫学を検討することであった。

 

方法

臨床的に重要な下痢を有する患者を組み入れた。便検体のC. difficileについて、病院の検査室でトキシン A および/または B に対する酵素免疫測定法(EIA)を用いた検査を行い、中央検査室で毒素産生性検査培養および核酸増幅検査を実施した。CDI のリスク因子、および CDI が死亡率に及ぼす影響について検討した。

 

結果

合計で臨床的に重要な下痢を有する患者 566 例を本解析に組み入れた。計 152 例が、トキシン A/B に対する EIA、毒素産生性検査培養または核酸増幅検査により CDI の診断を受けた。CDI に関連する因子には、アルブミン低値(補正オッズ比[aOR]1.56、95%信頼区間[CI]1.03 ~ 2.34)および便検体採取前の入院期間 18 日超(aOR 1.73、95%CI 1.09 ~ 2.75)などであった。CDI は、単変量解析で死亡率上昇と関連したが(OR 1.6、95% CI 1.0 ~ 2.6)、多変量解析では死亡率上昇と関連しなかった。

 

結論

日本における CDI のリスク因子は、米国および欧州で同定されたリスク因子と同様であった。しかし CDI は、臨床的に重要な下痢を有するこの患者集団において死亡率上昇と関連しなかった。

 

サマリー原文(英語)はこちら

 

監訳者コメント

CDIは欧米において重要な医療関連感染であり、これまで多くの研究がなされているが、日本での危険因子などの疫学情報は十分ではない。本論文ではCDIに関する前向きコホート研究がなされ、長期療養型施設への入院、低アルブミン血症、癌、長期入院が危険因子として特定されたが、日本における特徴的なものを見いだすことはできなかった。また、発症前の抗菌薬使用や再発との関連性については十分なデータがとれず検討できていない。しかしながら、CDIは重要な医療施設内感染症であり、このような日本での研究が、国家的な戦略としてさらに発展的に実施されることが期待される。

 

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