集中治療室 3 室における抗菌薬適正使用支援プログラムの影響の変動:2012 年から 2017 年のサーベイランスデータの時系列分析
Variable impact of an antimicrobial stewardship programme in three intensive care units: time-series analysis of 2012-2017 surveillance data
S. Abbara*, M. Domenech de Cellès, R. Batista, J.P. Mira, C. Poyart, H. Poupet, A. Casetta, S. Kernéis
*INSERM, France
Journal of Hospital Infection (2020) 104, 150-157
背景
1,500 床の当院において 2012 年 と 2016 年に、処方前の許可制および処方後のレビューとフィードバックを連続的に実行した。
目的
集中治療室(ICU)3 室において、処方前の許可制および処方後のレビューとフィードバックが、カルバペネム系薬剤の使用と緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の耐性レベルに与える影響を評価した。
方法
カルバペネム系薬剤の使用(1,000 病床日あたりの 1 日規定用量[DDD])と緑膿菌の耐性(イミペネムおよび/またはメロペネムに非感受性[中等度の感受性+耐性]の割合)について、コントロールされた分割時系列手法を用いて分析した。2012 年から 2015 年(処方前の許可制)と 2016 年から 2017 年(処方前の許可制+処方後のレビューとフィードバック)の 2 つの期間を比較した。モデルは基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌の年間出現率に基づいて調整した。
結果
すべての ICU で処方前の許可制の期間にわたってカルバペネムの使用は安定しており、ICU1 でのみ、処方前の許可制+処方後のレビューとフィードバックの期間にわたって有意な勾配の変化があった(β2 = −12.8、95%信頼区間[CI]−19.5 ~ −6.1)。全 3 室において処方前の許可制の期間中、イミペネムからメロペネムへの切り替えがあった。緑膿菌の耐性は、ICU1 と ICU2 では試験期間にわたって安定しており、ICU3 では処方前の許可制+処方後のレビューとフィードバックの期間にわたって有意に低下した(β2 = −0.18、CI −0.3 ~ −0.03)。
結論
実際の状況において、単独のチームが主導する同一の抗菌薬適正使用支援プログラムを実施したところ、処方後のレビューとフィードバックの影響は ICU 間で均一ではなかった。抗菌薬適正使用支援プログラムの影響を推進する因子は、それらの費用効率が高いと証明できうる場所を標的にするため、比較可能な環境で実際の状況のデータを介してさらに評価を受けるべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
24 床、10 床、16 床の 3 つの ICU ユニットにおける抗菌薬適正使用支援プログラムの実施と耐性の割合を検討した論文である。「処方前の許可制」が行われているところに「処方後のレビューとフィードバック」を追加し、それぞれの期間での緑膿菌の耐性の割合を比較しているが、変化なし ~ 低下となっていた。介入の遵守率が不明であるが、この施設では、処方前の許可制がよく機能しているのではと思われた。
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