幹細胞移植病棟において感染症をきたしやすい手技の施行前に手袋を装着した手指消毒が手指衛生に及ぼす影響★★
Effect of gloved hand disinfection on hand hygiene before infection-prone procedures on a stem cell ward
P. Fehling*, J. Hasenkamp, S. Unkel, I. Thalmann, S. Hornig, L. Trümper, S. Scheithauer
*Georg August University Goettingen, Germany
Journal of Hospital Infection (2019) 103, 321-327
背景
感染症をきたしやすい手技の実施前であっても、手指衛生の遵守率は、(世界保健機関[WHO]によれば、適応2「無菌操作前」)依然として満足できるものではない。
目的
リソースに左右されないプロセス最適化戦略として手袋を装着したままで手指消毒の実施をすることにより手指衛生遵守率を改善すること。
方法
幹細胞移植病棟において、3 フェーズから成る介入研究を実施した。ベースラインで手指衛生遵守率を評価した(フェーズ 1)後、手袋を装着した手指消毒を指示し(フェーズ 2)、次いで制限して(フェーズ 3)、学習効果と時間効果に基づいて介入の評価と比較を行った。積極的サーベイランスにより、重症感染症の発生率ならびに病院獲得多剤耐性細菌の検出率を記録した。
結果
手指衛生遵守率は、手袋を装着した手指の消毒を指示した場合は 50%から 76%に有意に改善した(P < 0.001)。最も大きな上昇が認められたのは感染症をきたしやすい手技(WHO 適応 2)で、31%から 65%に上昇した(P < 0.001)。重症感染症は減少の傾向が認められた(1,000人年当たり 6.0 から 2.5)。一方、多剤耐性細菌の伝播には変化は認められなかった。
結論
手袋を装着した手指の消毒により手指衛生遵守率は有意に改善し、とくに感染症および感染予防に関連する活動において顕著であった。したがって、こうしたプロセス最適化は、極めて脆弱な患者集団において、追加で実施することが容易な、リソースに左右されないツールとなる可能性がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
これまで手袋の上から消毒することは御法度であったが、ドイツにおける幹細胞移植病棟という特殊な免疫能低下患者集団への新たな試みである。無菌操作の前の手指衛生は忘れがちであり、手袋を装着してから気づくことも多く、このような研究に至ったものと推察される。無菌操作前に限っての手袋の上からの手指消毒は効果的であることが推測される。実際、耐性菌獲得はそれ以外の手指衛生が関連するため減少は認められなかったが、カテーテル操作などの無菌操作の破綻により発生する重症感染症の発生率は減少傾向であり、新たな対策ツールとして興味深く、さらなる検討が望まれる。
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