米国における多剤耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に起因する呼吸器感染症疑いの臨床的・経済的負担の増加

2019.10.15

Incremental clinical and economic burden of suspected respiratory infections due to multi-drug-resistant Pseudomonas aeruginosa in the United States


Y.P. Tabak*, S. Merchant, G. Ye, L. Vankeepuram, V. Gupta, S.G. Kurtz, L.A. Puzniak
*Becton, Dickinson & Company, Franklin Lakes, USA
Journal of Hospital Infection (2019) 103, 134-141
背景
多剤耐性緑膿菌(multi-drug resistant Pseudomonas aeruginosa;MDRP)は、患者および病院に悪影響を及ぼす可能性がある。
目的
米国の 78 の病院において、MDRP に起因する呼吸器感染症疑いの入院患者の超過死亡率および費用負担を、非多剤耐性緑膿菌(non-MDRP)に起因する呼吸器感染症疑いの入院患者と比較して評価すること。
方法
本研究では、米国疾病対策センターの定義に従って、病院感染の MDRP または non-MDRP を特定するため、重複のない呼吸器の供給源由来の緑膿菌分離株が入院から 3 日以上後に採取された入院患者の、電子的に保存された微生物学的データおよび転帰のデータを分析した。死亡率、入院期間、費用、運用損益、30 日再入院について、多剤耐性のリスクを推定した。入手可能な薬剤データのコホートを用いて、感度分析を実施した。
結果
523 例の MDRP および 1,381 例の non-MDRP の症例において、未補正の死亡率は 23.7%対 18.0%、多変量補正した死亡率は 20.0%(95%信頼区間[CI]14.3% ~ 27.2%)対 15.5%(95%CI 11.2% ~ 20.9%、P = 0.026)、平均補正延長 LOS は 6.7 日(P < 0.001)であった。症例あたりの超過費用は 22,370 US ドル(P = 0.002)であり、症例あたりの運用損失は 10,661 US ドル(P = 0.024)大きく、多変量補正した再入院率は 16.2%(95%CI 11.2% ~ 22.9%)対 11.1%(95%CI 7.8% ~ 15.6%、P = 0.006)であった。感度分析の結果も同様であった。
結論
患者および病院の特性を調整した後、non-MDRP に起因する感染症疑いと比較して、MDRP に起因する感染症疑いの患者は、死亡、再入院、入院期間延長のリスクがより高く、また、症例あたり 20,000 US ドルの費用増加および症例あたり 10,000 US ドルを超える純損失の増加となるリスクもより高かった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
MDRP による感染症は、死亡、再入院、入院期間延長のリスクが non-MDRP 感染症より高いことが本研究により明らかとなっている。具体的に感染症を発症した際に、効果的な抗菌薬療法が得られない場合が多いことがその大きな要因になっている。

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