手術器具の複雑なデザインが効果的な洗浄の障害となり、バイオフィルム形成を促進する★★
Complex design of surgical instruments as barrier for cleaning effectiveness, favouring biofilm formation
L.K.O. Lopes*, D.M. Costa, A.F.V. Tipple, E. Watanabe, R.B. Castillo, H. Hu, A.K. Deva, K. Vickery
*Federal University of Goiás, Brazil
Journal of Hospital Infection (2019) 103, e53-e60
背景
不十分な再処理を受けた再利用可能な手術器具は感染性病原体を保有している可能性があり、次いでこうした病原体が、複製に適した部位に伝播する可能性がある。
目的
20 サイクルの汚染、洗浄(手動、または手動後に自動)および蒸気滅菌が、整形外科手術に用いられる高度に複雑な再利用可能な手術器具に及ぼす累積作用を明らかにすること。
方法
新しい軟性髄内リーマーおよび深さゲージを、5%ヒツジ血および109 cfu/mLの黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(ATCC 25923)を含有するトリプトン大豆ブロスに 5 分間浸漬して汚染させた。最悪ケースのシナリオを再現するため、再利用可能な手術器具を 7 時間乾燥させ、以下のいずれかを実施した:(a)蒸留水で洗浄、(b)手動洗浄、(c)手動洗浄後に自動洗浄(参照標準)および蒸気滅菌。汚染、洗浄および滅菌のサイクルを 20 回反復実施した。アデノシン三リン酸の測定を洗浄手順後に行い、細菌数および残存蛋白量の測定を、10 回目および 20 回目の再処理後に 3 回実施した。走査電子顕微鏡を用いて、20 回目の再処理後に再利用可能な手術器具上における汚染物およびバイオフィルムの有無を確認した。
結果
手動洗浄および手動+自動洗浄により、すべての再利用可能な手術器具において、アデノシン三リン酸および残存蛋白質の量が有意に減少した。生きた細菌は、滅菌後には検出されなかった。しかし、走査電子顕微鏡により自動洗浄後に汚染物が検出され、手動洗浄後にバイオフィルムを含めた汚染物が検出された。
結論
複雑なデザインの再利用可能な手術器具において、20 サイクルの汚染および再処理の実施後に、参照標準の洗浄法を用いても、汚染物および/またはバイオフィルムが認められた。深さゲージは分解可能であるが、生物学的残存物およびバイオフィルムがその内腔に蓄積していた。これらの再利用可能な手術器具の現行のデザインにより、生物学的汚染物をすべて除去することができず、患者転帰に有害な影響を与える可能性がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
使用後の手術器具の再生工程において、洗浄は最も重要な工程であり、不適切であるとバイオフィルム形成をもたらし、細菌特に黄色ブドウ球菌等が残存する結果となり、術後感染の原因ともなるため、適切に洗えない器具を再生利用してはならないのが鉄則であろう。しかしながら、これまで医療機器の洗浄不十分により洗浄後滅菌され使用されるという事件がいくつも発生している。確実に洗浄できない医療器具の再生後の使用は不適切であり、器具の設計段階から分解洗浄の可能な構造と仕組みを考慮すべきである。しかしながら、平成 30 年には単回使用医療機器の再製造についての法整備が実施され、一定の基準をクリアすれば医療機器製造販売会社が単回使用医療機器の再製造及び販売が可能となっている。米国や英国でもこのような再利用がすでに実施されている。
(医薬品医療機器総合機構 https://www.pmda.go.jp/about-pmda/news-release/0046.pdf)
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Journal of Hospital Infection (2020) 104, 293-297