スコットランドの腎移植施設におけるニューモシスチス肺炎のアウトブレイクから得られた教訓

2019.07.02

Lessons learned from a pneumocystis pneumonia outbreak at a Scottish renal transplant centre


A. McClarey*, P. Phelan, D. O’Shea, L. Henderson, R. Gunson, I.F. Laurenson
*Royal Infirmary of Edinburgh, UK
Journal of Hospital Infection (2019) 102, 311-316
背景
ニューモシスチス肺炎は、腎移植患者に発生する日和見感染症である。当院の腎移植コホートにおいて、14 か月間にわたりニューモシスチス肺炎症例の増加が認められた。
目的
アウトブレイク集団の調査を行い、ニューモシスチス肺炎発症において考えうるリスク因子の同定を試みた。
方法
病院の医療記録について後向き分析を実施し、各症例を、症例と関係のある対照者2例とマッチさせた。患者の人口統計学的因子、臨床検査結果、および来院に関する情報を、感染症発症の前後について収集した。
結果
感染症の発症時点でニューモシスチス肺炎に対する予防投与を受けていた患者はおらず、腎移植からニューモシスチス肺炎発症までの平均期間は 4.7 年(範囲 0.51 ~ 14.5)であった。ニューモシスチス肺炎群では対照群よりも、推算糸球体濾過量の平均が有意に低かった(29.3 mL/ 分 /1.73 m2 対 70 mL/min-1P = 0.0007)。患者 3 例はニューモシスチス肺炎の診断前に活動性サイトメガロウイルス感染症に対する治療を受けており、2例は診断時に活動性サイトメガロウイルス感染症に罹患していたのに対し、対照群では罹患者はいなかった(P = 0.001)。ニューモシスチス肺炎群では、ニューモシスチス肺炎を発症することになった別の患者と来院が同時であった割合が高く、37%が同時受診であったのに対して対照群では 19%であった(P = 0.014)。
結論
本研究は、腎移植から数年後でも日和見感染症のリスクが継続していることを強調しており、またニューモシスチス・イロベチイ(Pneumocystis jirovecii)のヒト‐ヒト伝播の可能性の重要性を示している。最もリスクが高い患者を示す可能性のあるリスク因子が同定され、これによりニューモシスチス肺炎に対して長期にわたる無差別の予防投与ではなく、標的を絞った予防投与が可能になる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
ニューモシスチス肺炎のヒトヒト感染は以前から報告されているが、本事例でもその可能性が示唆された。その他のリスク因子については、症例数が少ないので実際のところ何ともいえないように思われる。

同カテゴリの記事

2013.06.29

Advances in electronic surveillance for healthcare-associated infections in the 21st Century: a systematic review

2018.05.31

Routine use of PICO dressings may reduce overall groin wound complication rates following peripheral vascular surgery

2006.03.31

Virus diffusion in isolation rooms

2014.01.30

In vivo comparative efficacy of three surgical hand preparation agents in reducing bacterial count

JHIサマリー日本語版サイトについて
JHIサマリー日本語版監訳者プロフィール
日本環境感染学会関連用語英和対照表

サイト内検索

レーティング

アーカイブ