病院における手指衛生:改革の分析
Hand hygiene in hospitals: anatomy of a revolution
T. Vermeil*, A. Peters, C. Kilpatrick, D Pires, B. Allegranzi, D. Pittet
*University of Geneva Hospitals and Faculty of Medicine, Switzerland
Journal of Hospital Infection (2019) 101, 383-392
医療関連感染症(HAI)は、世界的に数億の人々に影響を及ぼす。HAI を予防するための感染予防・制御の重要な戦略として、手指衛生の実施が広く認められているが、これは、医療従事者の汚染された手指が、医療における病原体の交差伝播にもっともよく関係する媒体であるためである。ここ 20 年間で、手指衛生にパラダイムシフトが起こっている。すなわち、石けんや水による手洗いから、擦式アルコール製剤の使用への変化である。この改革を背景の中で捉え、非常に多くの異文化や地理的地域において、そのような変化がいかに起こりえたかを理解するために、一般的に衛生という概念、とくに手指衛生という概念が、どのように進展したかを理解することは有用である。本稿は、衛生および手指衛生についての考え方が、古代から現代までに、また、ある地域の一連の概念から世界的な現象にまで、いかに進化したか調査することを目的とした。知られる限り最初に記されたバビロン文明下での石けんの作り方から、塩素の発見まで、そして Antoine Germain Labarraque、Alexander Gordon、Oliver Wendell Holmes、Ignaz Philip Semmelweis、Louis Pasteur、Joseph Lister など先駆者による大きな貢献まで、歴史上の画期的な事象についてレビューする。HAI 予防のために、1980 年代に石けんや水による手洗いがガイドラインに登場したことを振り返り、次いで多面的改善戦略における実践の中心的な手段として擦式アルコール製剤が、石けんや水による手洗いに取って代わった理由を述べ、そして世界保健機関や他の熱心な利害関係者、政府、感染予防・制御の専門スタッフが、どのように手指衛生を支持しているかに着目する。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
ジュネーヴ大学の Pittet 教授のグループによる手指衛生に関する総説である。歴史的な変遷を辿り今日の状況を認知する良い機会である。
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