末梢静脈カテーテル関連黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)菌血症における死亡および合併症のリスク因子:大規模多施設共同コホート研究
Risk factors for mortality and complications in peripheral venous catheter-associated Staphylococcus aureus bacteraemia: a large multicentre cohort study A. Gallego Rodríguez*, P. Duch Llorach, S. Grillo, M. Piriz Marabajan, V. Pomar Solchaga, A. Hornero López, E. Jimenez Martínez, I. Oriol Bermudez, A. Rivera, M. Pujol Rojo, J. López-Contreras González *Hospital de la Santa Creu i Sant Pau—Institut d’Investigació Biomèdica Sant Pau, Spain Journal of Hospital Infection (2024) 152, 13-20
背景
末梢静脈カテーテル関連黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)菌血症(PVC-SAB)は、生命を脅かしうる院内感染症である。
目的
本コホート研究では、PVC-SAB による死亡および合併症に関連するリスク因子を同定する。
方法
スペインの 2 つの 3 次病院で実施された前向きコホート研究の後向き解析を行った。2011年 1 月から 2019 年 7 月までに入院し、入院期間中に PVC-SAB を発症した成人患者を対象とした。主要転帰は、30 日および 90 日全死因死亡率とした。副次的転帰は、菌血症発症時の敗血症または敗血症性ショック、転移性感染、入院期間とした。単変量解析と多変量解析を行った。
結果
2011 年から 2019 年の間に患者 243 例において合計 256 件の PVC-SAB が診断された。30 日および 90 日全死因死亡率は、それぞれ 18.3%および 24.2%であった。血液培養採取の翌日に感受性抗菌薬投与が行われなかったこと(オッズ比:4.14、95%信頼区間 1.55 ~ 11.03、P = 0.005)、敗血症、合併症を伴う菌血症が、30 日および 90 日死亡の独立したリスク因子として同定された。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌菌血症は 30 日死亡のみ、機能的依存性は 90 日死亡のみの独立リスク因子として同定された。持続性菌血症および敗血症が、入院期間を有意に延長させる敗血症性転移に関連するとともに、心内膜炎に関連した。敗血症性ショックが発現した患者では、発現しなかった患者と比較して、後に施設に収容された割合が高かった。
結論
PVC-SAB は依然として高い死亡率に関連している。死亡率を低下させるためには、適切な抗菌薬の速やかな投与がきわめて重要である。持続性菌血症を有する、心血管デバイスが植え込まれた患者においては特に、転移性の合併症および心内膜炎を除外するために、包括的な診断アプローチが不可欠である。
監訳者コメント:
この論文では、末梢静脈カテーテル(PVC)に関連する黄色ブドウ球菌血流感染症(PVC-SAB)のリスク因子として、抗菌薬の早期投与の欠如、敗血症、複雑な菌血症が死亡率に大きく影響することが示されている。特に心血管デバイスを有する患者では転移性合併症や心内膜炎のリスク評価が不可欠である。また末梢静脈カテーテルに関連した感染症にも、しっかりと注意を払っていく必要がある。
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