小児病院での抗菌薬処方のパスウェイにおける決定的ポイント:Antibiotic Mapping of Prescribing(ABMAP)研究★

2019.04.15

Critical points in the pathway of antibiotic prescribing in a children’s hospital: the Antibiotic Mapping of Prescribing (ABMAP) study


A. Bashir*, J. Gray, S. Bashir, R. Ahmed, E. Theodosiou
*Aston University, UK
Journal of Hospital Infection (2019) 101, 461-466
背景
世界保健機関は、抗菌薬耐性を、現代医学が直面している最も重大な世界的リスクの 1 つであると見なしている。抗菌薬処方を改善するための介入は、これまでのところその効果が限られていた。
目的
効果的な抗菌薬処方を妨げる阻害因子について理解すること。
方法
複数の方法を混合して用いて、処方行動を調査し、入院患者に対する抗菌薬処方のパスウェイにおける決定的ポイントの特定を試みた。処方者の知識、経験またはエンパワメント、組織的因子、ならびに検査の利用について評価した。第 1 相では、オンライン調査によって抗菌薬処方に対する阻害因子と促進因子のマッピングを行った(参加者 56 名)。第 2 相では、処方者の行動についてさらなる理解をするためのフォーカスグループおよび面接を実施した(参加者 10 名)。第 3 相では、可能な解決策に関する意見を得るためにオンライン調査を行った(参加者 22 名)。
結果
処方に対する阻害因子を挙げたのは、検査に関する因子が 71.6%、リソースに関する問題が 40%、時間の制限が 17.5%、他者からのプレッシャーが 52%であった。処方者らの 93%が抗菌薬耐性について懸念を抱いていた。3 つのシナリオにおいて、細菌感染症のない患者に対して確信を持って抗菌薬を処方しないとしたのはわずか 9%であり、53%は肺炎に対して不必要な広域スペクトル抗菌薬を処方すると回答した。細菌学的検査で菌血症が確定された場合に、抗菌薬の de-escalation を行うとしたのはわずか 5%であった。抗菌薬耐性に対する懸念を持っているにもかかわらず処方者らは、個々の患者に抗菌薬を使用し続けることで耐性を促進する可能性があることを認識していなかった。処方者らは、勤務時間外に抗菌薬を変えたいとは思っておらず、また抗菌薬処方について専門的なサポートを望んでいた。
結論
処方者間で、自己報告による処方行動および臨床シナリオに対する反応には大きなばらつきがあった。トレーニングのみで行動が変わるかどうかは明らかでなかった。処方者らは、抗菌薬処方および抗菌薬管理を支援してくれる指導システムを求めていた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
薬剤耐性と抗菌薬適正使用は吃緊の課題であり、ほとんどの医師がそれを意識しているにもかかわらず、実際の行動が伴っていない。学生時代から適正使用についての教育訓練を受けていても、それが実際の行動につながっていないことも今回の調査で判明している。患者を前にして処方を変更する自信が十分にないことが原因にあった。したがって、これらの抗菌薬適正使用を妨げている因子を改善するための方策は、必要時に抗菌薬処方について支援してくれる感染症専門家の存在であり、多くの医師がそれを望んでいる。実際には抗菌薬適正使用チーム(AST)がこれを担うこととなる。

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