2014 年から 2017 年に中国の病院 1 施設で発生した多剤耐性病原体に起因する医療関連感染症クラスターの抗菌薬使用データによる検出

2019.03.12

Data on antibiotic use for detecting clusters of healthcare-associated infection caused by multidrugresistant organisms in a hospital in China, 2014 to 2017


Y. Fan* , J. Zou, X. Cao, Y. Wu, F. Gao, L. Xiong
* Union Hospital, Tongji Medical College, Huazhong University of Science and Technology, China
Journal of Hospital Infection (2019) 101, 305-312
背景
医療関連感染症(HCAI)クラスターの検出は、疾患伝播を制御する上で極めて重要である。
目的
多剤耐性病原体(MDRO)に起因する HCAI クラスターを特定するために、抗菌薬使用に関するデータが代替指標として使用可能であるかどうかを検討すること。
方法
2014 年 1 月から 2017 年 1 月に中国の 3 次病院 1 施設の 4 つの独立した高リスク病棟において、MDRO に関連する HCAI と、抗菌薬使用に関する 10 の指標について後向きに分析を行った。Spearman の相関検定を用いて変数間の相関を評価し、シューハート(Shewhart)管理図アルゴリズムを用いてクラスター特定における性能を評価した。
結果
MDRO に関連する HCAI 症例 856 例を特定した。抗菌薬使用の指標は、一部の例外を除いてすべて、MDRO に関連する HCAI の発生と正の相関を示した(r = 0.2 ~ 0.5、P < 0.05)。例外は、単剤使用の抗菌薬使用率(r = -0.191、P = 0.017)および限定しない薬剤の抗菌薬使用率(r = -0.042、P = 0.601)であった。シューハート(Shewhart)管理図アルゴリズムにより、MDRO に関連する HCAI の 22 のクラスターが特定された。特別グレード抗菌薬の抗菌薬使用率、併用使用された 3 剤の抗菌薬使用率、および患者ごとに使用される抗菌薬の多様性は、MDRO に関連する HCAI のこれら 22 のクラスターの検出において最適な予測値を示した。許容可能であるとして規定した75%というレベルにおいて、これら 3 つの指標は MDRO に関連する HCAI のクラスター を検出する上で最適なサーベイランス指標であると考えられ、感度は 80.00%から 95.00%、陽性的中率は 71.05%から 77.50%の範囲であった。
結論
抗菌薬使用に関するデータの使用は、高リスクの病棟において MDRO に関連する HCAI のクラスターを特定する上で感度の高い方法であり、HCAI サーベイランスを補助する方法として有用となる可能性がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
ぱっと見によく分からない論文かもしれない。HCAI サーベイランスは細菌検査、あるいは症例定義に基づいた報告に基づくサーベイランスであり、確立されたサーベイランスの一つであるが、検査を出さなかったり報告を怠ったりすることによる症例の漏れや、結果を集計するまでの時間的問題などが指摘されている。抗菌薬の使用状況は、これらの HCAI の発生を感度良く捉える代替指標になるのではないか、という発想に基づく論文である。なるほど広域抗菌薬の使用量が急に増えたとなれば、「そこで何かが起きているのではないか」ということは確かに容易に予想されることであり、本論文では実際に抗菌薬の使用状況は HCAI サーベイランスを補助する方法として有用と結論づけている。ICT や AST でも抗菌薬の使用状況と HCAI の発生状況はしばしば「別々」に報告されているが、統合的に評価すると「あれ?この病棟、なんで抗菌薬の使用量増えているんだろう?」と、新しいものが見えてくるのではないだろうか。

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