集中治療におけるカルバペネム耐性グラム陰性菌の保菌と感染症に積極的サーベイランスと感染制御対策が及ぼす影響★

2018.08.23

Impact of active surveillance and infection control measures on carbapenem-resistant Gram-negative
bacterial colonization and infections in intensive care


T. Karampatakis*, K. Tsergouli, E. Iosifidis, C. Antachopoulos, A. Karapanagiotou, A. Karyoti, N. Gritsi-Gerogianni, A. Tsakris, E. Roilides
*Hippokration General Hospital, Greece
Journal of Hospital Infection (2018) 99, 396-404
背景
カルバペネム耐性グラム陰性菌感染症は、重篤な患者やその患者の入院転帰において世界的な脅威となっている。直腸部の監視培養によるカルバペネム耐性グラム陰性菌の早期検出と、接触予防策・適切な消毒薬の使用・清掃に関する職員の教育・手指衛生などルーチンの感染制御対策は、カルバペネム耐性グラム陰性菌の伝播拡散を低減しうる。
目的
流行地域の 3 次病院の 9 床の混合集中治療室において、感染制御対策の強化がカルバペネム耐性グラム陰性菌感染症に及ぼす影響を評価すること。
方法
カルバペネム耐性グラム陰性菌感染症の患者を対象とした準実験的研究において、6 か月間は後向きに評価し、その後 22 か月間は前向きに積極的サーベイランスプログラムに参加させた。積極的サーベイランスプログラム(週 1 回の直腸スワブ)は、感染制御対策または強化感染制御対策を併用する 2 つのサブ期間を設けて実施した。カルバペネム耐性グラム陰性菌の発生率、有病率、保菌圧、感染症、感染制御対策・強化感染制御対策の遵守について記録した。時系列分析および分割時系列分析を実施した。
結果
積極的サーベイランスプログラム実施期間における、強化感染制御対策のサブ期間には、感染制御対策のサブ期間と比較して、カルバペネム耐性グラム陰性菌の発生率・有病率・保菌圧の急激な低下傾向がみられた。線形傾向は、カルバペネム耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)感染症については 1,000 床・日 あたり 19.6 件から 8.1 件に減少(P = 0.001)、カルバペネム耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染症については 1,000 床・日 あたり 5.1 件から 1.79 件に減少した(P = 0.043)。これに対して、カルバペネム耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)感染症は 1,000 床・日 あたり 5.2 件から 15.3 件に増加した(P = 0.001)。
結論
手指衛生の強化、接触予防策・教育・監査・フィードバックの方針を併用する積極的サーベイランス、介入などの感染制御対策の強化は、流行地域のカルバペネム耐性肺炎桿菌およびカルバペネム耐性緑膿菌を低減しうる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
カルバペネマーゼ産生菌の多くはバイオフィルムを産生している。手指衛生の強化、接触予防策・教育・監査・フィードバックとともに環境の清拭消毒に塩素系の消毒薬を使用すると効果的である。

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