新生児集中治療室におけるカルバペネム耐性グラム陰性菌による遅発性敗血症のリスク因子および臨床転帰
Risk factors and clinical outcomes for carbapenem-resistant Gram-negative late-onset sepsis in a neonatal intensive care unit
I. Nour*, H.E. Eldegla , N. Nasef, B. Shouman, H. Abdel-Hady, A.E. Shabaan
*Mansoura University Children’s Hospital, Egypt
Journal of Hospital Infection (2017) 97, 52-58
背景
カルバペネム耐性(carbapenem-resistant:CR)グラム陰性菌(Gram-negative:GN)による遅発性敗血症(late-onset sepsis:LOS)は、新生児集中治療室(NICU)において重大な脅威である。
目的
NICU 患者における CR-GN-LOS の有病率を評価し、その獲得に関連するリスク因子および転帰を明らかにすること。
方法
2 年間の観察研究において、カルバペネム感受性(carbapenem-susceptible:CS)-GN-LOSの新生児と CR-GN-LOS の新生児を比較した。
結果
計 158 例の患者が GN-LOS を発症した。内訳は、CS-GN-LOS が 100 例、CR-GN-LOS が 58 例であった。CR-GN-LOS の発生率は、1,000 患者日あたり 6.5 件であった。両群とも、最も高頻度にみられた菌種は肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)であった。完全静脈栄養(TPN)の施行期間(P = 0.006)およびカルバペネム系薬の使用歴(P = 0.01)は、CR-GN-LOS 獲得の独立危険因子であった。CR-GN-LOS は、CS-GN-LOS よりも高い死亡率と関連した(P = 0.04)。出生体重、在胎期間が短いこと、経腸栄養開始までの期間、完全人工栄養、手術歴、抗真菌薬使用歴、発症前の中心静脈デバイスの使用、中心静脈デバイスの使用期間、および感染性合併症は、全死亡の従属危険因子であった。しかし、男児であること(P = 0.04)および感染性合併症(P < 0.001)のみは、死亡に関連する独立危険因子であった。感染性合併症の発症率、機械換気の期間、および入院日数は、CS-GN-LOS の患者よりも CR-GN-LOS の患者のほうが有意に高い、または長かった。
結論
TPN の期間およびカルバペネムの使用は CR-GN-LOS 獲得の独立した予測因子であった。CR-GN-LOS は、高い死亡率、高い感染性合併症発症率、長い機械換気期間、および長い入院期間と関連する。男児であること、および感染性合併症は、GN-LOS 発症新生児の死亡の独立危険因子であった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
エジプトにおける NICU でのカルバペネム耐性グラム陰性菌による菌血症に関する研究であり、58 例のうち 40%(22 例)が死亡している。なお菌種では肺炎桿菌が 37.9%と最も多かった。日本の調査でも 2013 年から 2015 年の3年間で新生児 60 例以上が ESBL 産生菌感染症に罹患し、少なくとも 2 例が死亡したとされており、新生児領域での耐性菌感染症のモニタリングも重要である。
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