COVID-19 だけではない:COVID-19 対策と医療関連感染症に対するそれらの効果に関するシステマティックレビュー
Not only COVID-19: a systematic review of anti-COVID-19 measures and their effect on healthcare-associated infections F. Ciccacci*, C. De Santo, C. Mosconi, S. Orlando, M. Carestia, L. Guarente, G. Liotta, L. Palombi, L. Emberti Gialloreti *Saint Camillus International University of Health and Medical Sciences, Italy Journal of Hospital Infection (2024) 147, 133-145
背景
医療関連感染症(HAI)は世界中で医療に負担をかけている。SARS-CoV-2 パンデミックの渦中、マスク着用や手指衛生などの感染制御策の強化が実施された。
目的
入院患者の HAI の予防におけるこれらの対策の有効性を評価した。
方法
PICO(Population、Intervention、Comparison、Outcome)の枠組みを用いて、入院患者と、HAIの予防における COVID-19 対策の有効性に焦点を当てた。2020 年から 2022 年に公表された文献のシステマティックレビューを実施し、マスク着用、手指衛生、環境清掃などの介入を調べた。
結果
本システマティックレビューでは、2020 年の 2 件、2021 年の 21 件、2022 年の 19 件の合計 42 件の研究を解析した。大半が高所得国での研究であった(28 件)。大部分の研究(42 件中 30 件)において、COVID-19 対策実施後の HAI の減少が報告された。消化管感染症および気道感染症が有意に減少したが、血流感染症や尿路感染症にはそのような減少は認められなかった。循環器科や神経科などの一部の病棟では HAI の減少が認められたが、集中治療室や冠疾患集中治療室では認められなかった。2022 年には HAI に対する衛生策の効果はないと報告した研究が増加しており、最終的に経時的な有効性の推移が示された。
結論
COVID-19 対策は、HAI の予防に選択的な有効性を示している。本研究は、状況に応じた戦略および資源が限られた地域への重点的な取り組みの必要性を強調している。特に高リスク環境において、感染制御の実践を改善するためには、継続的な調査が必須である。
監訳者コメント:
COVID-19 によって確かに「自分を守る」感染対策は強化されたが、「患者の感染を防ぐ」感染対策はおろそかになっているという実感がある。例えば医療従事者が手袋を装着することにより、患者間での手指衛生や、清潔・無菌操作前の手指衛生がおろそかになる、という事例が挙げられる。「COVID-19 で感染対策の意識が向上した」というのはその一側面だけをみた偏った見方であり、その中身は慎重に評価する必要がある。
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