中国、天津市の集中治療室の医療スタッフにおける多剤耐性グラム陰性細菌の検出率、分布および分子疫学(2007 から 2015 年)
Presence, distribution and molecular epidemiology of multi-drug-resistant Gram-negative bacilli from medical personnel of intensive care units in Tianjin, China, 2007-2015
H. Liu*, CN. Fei, Y. Zhang, GW. Liu, J. Liu, J. Dong
*Tianjin Centres for Disease Control and Prevention, China
Journal of Hospital Infection (2017) 96, 101-110
背景
多剤耐性グラム陰性細菌は、集中治療室(ICU)における院内感染症の重要な原因となっている。
目的
中国、天津市の ICU 69 施設の医療スタッフおよび非医療スタッフから分離された多剤耐性グラム陰性細菌の分子疫学を検討すること。
方法
2007 年 4 月から 2015 年 10 月にわたり、医療スタッフ 1,185 名および非医療スタッフ 133 人から採取した鼻腔および手指スワブ 2,636 個について、グラム陰性細菌(多剤耐性グラム陰性細菌を含む)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)およびバンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococci;VRE)の培養を行った。14 の抗菌薬に対するグラム陰性細菌の感受性を判定し、80 の多剤耐性グラム陰性細菌の特徴をパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)および系統樹解析を用いて明らかにした。
結果
合計で 301 のグラム陰性細菌が医療スタッフ 269 名で同定され、これには医療スタッフ 104 名から検出された 109 の多剤耐性グラム陰性細菌分離株が含まれた。42 のグラム陰性細菌が非医療スタッフ 39 人から分離され、これには多剤耐性グラム陰性細菌が検出された非医療スタッフ 20 人が含まれた。全体で医療スタッフの 8.8%が多剤耐性グラム陰性細菌を保菌しており、MRSA(0.9%)および VRE(0.1%)の保菌率をはるかに上回っていた。3 組の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)および 1 組のエンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)は互いに識別不能であったが、検査を行った分離株の大部分は独自の PFGE プロファイルを有していた。
結論
多剤耐性グラム陰性細菌の検出率は天津市の ICU の医療スタッフにおいて高く、VRE および MRSA の検出率をはるかに上回っていた。多剤耐性グラム陰性細菌の鼻腔保菌率には医療スタッフと非医療スタッフの間で差はなかったが、非医療スタッフは多剤耐性グラム陰性細菌の手指保菌を有する割合が有意に高かった。PFGE プロファイルから、スタッフ間で共通に認められた多剤耐性E. aerogenes および肺炎桿菌の分離株は極めて限られていたことが示された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
本研究では多剤耐性グラム陰性細菌が多様に院内ではびこっており、医療従事者の手指はそのるつぼであることが示された。日常的な医療従事者の手指衛生の徹底が求められる。
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