タイ南部の 3 次医療病院における院内獲得によるアシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)感染症の分子疫学および空間時系列分析

2017.01.31

Molecular epidemiology and spatiotemporal analysis of hospital-acquired Acinetobacter baumannii infection in a tertiary care hospital in southern Thailand


S. Chusri*, V. Chongsuvivatwong, J.I. Rivera, K. Silpapojakul, K. Singkhamanan, E. McNeil, Y. Doi
*Prince of Songkla University, Thailand
Journal of Hospital Infection (2017) 95, 53-58
背景
アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)はタイにおける主要な院内獲得病原菌であり、患者の生存に負の影響を及ぼしてきた。この病原菌の伝播の性質についてはあまり理解されていない。
目的
タイの 1 病院における A. baumannii 感染症の遺伝子型および空間時系列パターンを調べること。
方法
タイ南部の 800 床の 3 次医療病院において、A. baumannii 感染患者のカルテを 2010 年 1 月から 2011 年 12 月の間について後向きに精査した。A. baumannii を遺伝種レベルで同定した。A. baumannii 感染症に関連したカルバペネム耐性分離株において、カルバペネマーゼ遺伝子を同定した。入院病棟、感染時点、およびA. baumannii のパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)によるグループごとに空間時系列分析を行った。
結果
197 件の A. baumannii 感染症において 9 つの PFGE 遺伝子型が同定された。A. baumannii 全分離株がInternational Clonal Lineage II に分類された。カルバペネマーゼ遺伝子で最も頻度が高かったのは blaOXA-23 であった。アウトブレイクが観察されたのは、主として呼吸器病棟と集中治療室であった。PFGE 遺伝子型と病棟との関連は有意であった。空間時系列分析により、単一の PFGE グループによる感染症の 20 のクラスターが同定された。約半数のクラスターが、同時に複数の病棟で認められた。
結論
A. baumannii は病棟内および病棟間で伝播していた。A. baumannii 伝播のより詳しい理解と制御が必要とされる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
日本ではまだまだ少ない多剤耐性アシネトバクター・バウマニであるが、欧米や東南アジアでは相当広がっている。輸入感染症として注意が必要である。

同カテゴリの記事

2006.05.31

Retrospective investigation of patients exposed to possible transmission of hepatitis C virus by a capillary blood glucose meter

2014.03.31

Routes of transmission during a nosocomial influenza A(H3N2) outbreak among geriatric patients and healthcare workers

2018.12.25

Nosocomial outbreak of Candida parapsilosis sensu stricto fungaemia in a neonatal intensive care unit in China

2021.04.30

SARS-CoV-2 viability on different surfaces after gaseous ozone treatment: a preliminary evaluation

 

E. Percivalle*, M. Clerici, I. Cassaniti, E. Vecchio Nepita, P. Marchese, D. Olivati, C. Catelli, A. Berri, F. Baldanti, P. Marone, R. Bruno, A. Triarico, P. Lago

*Fondazione I.R.C.C.S. Policlinico San Matteo, Italy

 

Journal of Hospital Infection (2021) 110, 33-36

JHIサマリー日本語版サイトについて
JHIサマリー日本語版監訳者プロフィール
日本環境感染学会関連用語英和対照表

サイト内検索

レーティング

アーカイブ