腹部手術後の術後感染症予防のためのプロバイオティクスおよびシンバイオティクス:ランダム化対照試験のシステマティックレビューおよびメタアナリシス
Probiotics and synbiotics for the prevention of postoperative infections following abdominal surgery: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials
L. Lytvyn*, K. Quach, L. Banfield, B.C. Johnston, D. Mertz
*McMaster University, Canada
Journal of Hospital Infection (2016) 92, 130-139
背景
術後感染症、とくに手術部位感染症(SSI)は著しい罹患率および死亡率をもたらす。プロバイオティクスまたはシンバイオティクスは有力な予防戦略である。
目的
腹部外科手術後の術後感染リスクを低減するためにプロバイオティクス/シンバイオティクス1)の有効性を検討すること。
方法
待機的腹部外科手術患者がプラセボもしくは標準治療、またはプロバイオティクスもしくはシンバイオティクスの投与にランダム化された対照比較試験について、AMED、Central、CINAHL、Embase、Medline、灰色文献を検索した。主要アウトカムは SSI とした。副次的アウトカムは、有害事象、呼吸器感染症(RTI)、尿路感染症(UTI)、重複感染、入院期間、死亡とした。ランダム効果のメタアナリシスにより、相対リスク(RR)または平均差(MD)および95%信頼区間(CI)を推定した。不均一性を検定後、サブグループ解析および感度解析を実施し、全般的なエビデンスの質を評価した。
結果
術後感染症を報告した 20 試験(1,374 例)が特定された。プロバイオティクス/シンバイオティクスによる SSI(RR 0.63、95%信頼区間[CI]0.41 ~ 0.98、15 試験)、UTI(RR 0.29、95%CI 0.15 ~ 0.57、11 試験)、重複感染(RR 0.49、95%CI 0.35 ~ 0.70、18 試験)の低減が認められた。有害事象(RR 0.89、95%CI 0.61 ~ 1.30、6 試験)、RTI(RR 0.60、95%CI 0.36 ~ 1.00、14 試験)、入院期間(MD -1.19、95%CI -2.94 ~ 0.56、12 試験)、死亡率(RR 1.20、95%CI 0.58 ~ 2.48、15 試験)は群間に差がみられなかった。
結論
本総説から、プロバイオティクス/シンバイオティクスは、プラセボまたは標準治療と比べて、腹部手術による SSI および UTI を低減し、安全性リスクのエビデンスがみられないことが示唆される。全体的に、不正確性(患者数および事象数が少なく、CI が広い)により研究の質が低かったことから、この推定の確実性をさらに評価するために大規模な多施設共同試験が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
シンバイオティクスがうまく作用していると、腹部手術による SSI を減らせる可能性を示唆している。統一プロトコルによる大規模調査が必要である。
監訳者注:
1) シンバイオティクス:プロバイオティクス+プレバイオティクス
プレバイオティクスとは、①消化管上部で分解・吸収されない、②大腸に共生する有益な細菌の選択的な栄養源となり、それらの増殖を促進する、③大腸の腸内フローラ構成を健康的なバランスに改善し維持する、④人の健康の増進維持に役立つ、の条件を満たす食品成分のこと。
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