医療関連感染症を予防するための抗菌性表面:システマティックレビュー

2016.01.31

Antimicrobial surfaces to prevent healthcare-associated infections: a systematic review


M.P. Muller*, C. MacDougall, M. Lim and the Ontario Agency for Health Protection and Promotion (Public Health Ontario) the Provincial Infectious Diseases Advisory Committee on Infection Prevention and Control (PIDAC-IPC)
*St Michael’s Hospital, University of Toronto, Canada
Journal of Hospital Infection (2016) 92, 7-13
病原微生物による医療環境の汚染は、医療関連感染症(HCAI)の負担をもたらす。抗菌性表面は、医療環境表面の微生物汚染を低減するためにデザインされている。我々は、抗菌性表面が、HCAI、抗菌薬耐性菌の伝播、または抗菌薬汚染を防ぐかどうかを明らかにすることを目的として、病室における抗菌性表面の使用についてシステマティックレビューを実施した。転帰評価項目は、HCAI、抗菌薬耐性菌、および定量化した微生物汚染などとした。関連するデータベースを検索した。抄録のレビュー、フルテキストのレビュー、およびデータ抽出を 2 回行った。バイアスのリスクを Cochrane Effective Practice and Organization Care(EPOC)Group のバイアスリスク評価ツールを用いて評価し、またエビデンスの強さを Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation(GRADE)を用いて判定した。11 件の研究、銅(7 件)、銀(1 件)、合金(1 件)、または有機シラン処置(2 件)の表面が微生物汚染に及ぼす影響を評価していた。銅表面は、中央値(範囲)で微生物汚染の 1 log10(< 1 ~ 2 log10)未満の減少を示していた。2 件の研究は、HCAI/抗菌薬耐性菌の発生率を取り上げていた。ICU 1 施設における銅表面の無作為化臨床試験では、HCAI の 58%の減少(P = 0.013)、および抗菌薬耐性菌伝播の 64%の減少(P = 0.063)が示されたが、不適切な無作為化と不完全な盲検化のためにエビデンスの質は低いと見なした。長期療法病棟における銅浸漬布の非対照の前後研究では、HCAIの 24%の減少が示されたが、研究デザインに基づいてエビデンスの質は極めて低いと見なされた。臨床環境における銅表面の使用により、微生物汚染のわずかな減少が認められている。銅表面の 1 件の研究と、銅浸漬布の 1 件の研究では HCAI の減少が示されたが、いずれもバイアスのリスクが高かった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
環境表面に“抗菌性”物質を使用した場合の医療関連感染予防効果について論文調査した報告である。結論としては、関連文献の研究の質が低く十分な評価に値しないとしている。抗菌成分が環境表面に使用されていてもバイオバーデンとして付着している場合、汚染物質の内部までその効果が浸透することは難しく、液体系消毒薬などよりは効果がはるかに低く時間がかかることが想定される。

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