新生児黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)菌血症に対する抗菌薬療法の期間と合併症予防★
Antibiotic treatment duration and prevention of complications in neonatal Staphylococcus aureus bacteraemia
S. Kempley*, O. Kapellou, A. McWilliams, J. Banerjee, A. McCorqodale, M. Millar
*Queen Mary University of London, UK
Journal of Hospital Infection (2015) 91, 129-135
背景
成人においては、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)菌血症に対し適切な抗菌薬が投与されても、その治療期間が短ければ、合併症および再発のリスクが上がってしまう。一方、新生児での至適な治療期間については不明であり、実臨床でのばらつきも大きい。
目的
新生児黄色ブドウ球菌菌血症における治療期間と、合併症および再発の予防との関連を評価すること。
方法
大規模 3 次新生児室 2 室で 10 年間に発生した黄色ブドウ球菌菌血症の確定診断例を対象とした後向きコホート研究。出生から新生児室退室までに黄色ブドウ球菌菌血症の確定診断を受けた新生児を、微生物検査記録から特定した。患者基本情報、抗菌薬投与期間、転帰などの詳細な臨床データをカルテから入手した。再発は検査結果と臨床状況により判断した。不良な転帰と抗菌薬療法の期間との関連を評価した。
結果
合計 90 例の新生児が黄色ブドウ球菌菌血症を発症しており、このうち 6 例(7%)がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)であった。在胎週数中央値は 27 週(範囲 23 ~ 41 週)、出生体重中央値は 846 g(範囲 434 ~ 3,840 g)、および生後日数中央値は 16 日(範囲 0 ~ 116 日)であった。44%は転帰が不良であり、死亡率は8%であった。適切な抗菌薬療法の期間中央値は 19 日(範囲 0 ~ 54 日)であった。抗菌薬終了後の菌血症の再発例はなかった。抗菌薬療法の期間と合併症との間に関連はみられなかった。
結論
新生児における黄色ブドウ球菌菌血症は主として早産児に認められ、罹患率、死亡率ともに高かった。菌血症の再発は、治療期間にかかわらずまれであった。新生児の黄色ブドウ球菌菌血症例で合併症がない場合、再発予防を顧慮した抗菌薬の投与期間は 14 日で十分であると考えられる。ただし感染源のコントロールが不十分な場合は、より長期の治療が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
後向きコホート研究ではあるが、新生児の黄色ブドウ球菌菌血症の治療期間について、本研究で得られた知見は興味深い。治療期間別に分けた前向き試験は行いにくくもある。この成績が新生児そのものの特性によるものか、菌側の因子によるものか、今後の追試に注意したい。
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