新規四級化合物およびその N-クロラミン有機誘導体により緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の耐性変異株の選択は生じないことを示すエビデンス
Evidence that a novel quaternary compound and its organic N-chloramine derivative do not select for resistant mutants of Pseudomonas aeruginosa
M. De Silva*, C. Ning, S. Ghanbar, G. Zhanel, S. Logsetty, S. Liu, A. Kumar
*University of Manitoba, Canada
Journal of Hospital Infection (2015) 91, 53-58
背景
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、病院感染を引き起こし、抗菌薬に対する高度の自然耐性および獲得耐性を有することから、その治療はしばしば困難であることがよく知られている。Resistance-nodulation-division(RND)型薬剤排出ポンプは、この菌の自然多剤耐性の主要な原因の 1 つである。病院環境では様々なバイオサイド(殺生物剤)が用いられているが、それらは RND ポンプを過剰発現する緑膿菌変異株を選択してしまい、臨床的に重要な抗菌薬との交差耐性を来すことが判明している。したがって、緑膿菌などの拡散を制御するためには、多剤耐性変異株を選択しない殺生物剤を開発することが重要である。
目的
新規の四級アンモニウム化合物およびその N-クロラミン誘導体が、緑膿菌の多剤耐性変異株を選択し得るかどうか評価すること。
方法
四級アンモニウム化合物およびその N-クロラミン誘導体について、それぞれの濃度を漸増させた培地中で緑膿菌 PA01 を培養し、変異株を 1 株ずつ選択した。そしてこれらの変異株が、両化合物および抗菌薬に対するどのくらい感性を示すかを調べた。RND ポンプを欠失している緑膿菌株についても同様に、両化合物に対する感性を調べ、これらの化合物が RND ポンプの基質であるかどうかを明らかにした。変異株の mexB、mexD、および mexY 遺伝子の発現量を定量的逆転写 PCR 法により解析し、これらの化合物によって、ポンプを過剰発現している変異株の選択が生じるかどうかを明らかにした。
結果
両化合物ともに MexCD-OprJ ポンプ※によって排出され得るが、RND ポンプを過剰発現している変異株または抗菌薬に交差耐性を示す変異株のいずれについても、選択は生じないことが示された。
結論
これらの化合物は、病院環境で使用する消毒薬の有望な候補である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
消毒薬と抗菌薬の両方に交差耐性を来すメカニズムとして排出ポンプがあり、RND ファミリーはグラム陰性桿菌における排出ポンプに相当する。本研究は、これらの 2 化合物が RND ファミリーに属する MexCD-OprJ ポンプによって排出されるにもかかわらず、2 化合物に耐性となった株でも mexB、mexD、mexY 遺伝子の発現量には変化が生じなかったことから、2 化合物は MexAB-OprM/MexCD-OprJ/MexXY を過剰発現する株(つまり抗菌薬にも耐性となる株)を選択しないと結論づけている。交差耐性株の選択に関しては、さらに追加の知見が必要であろうが、新規バイオサイドの発見における重要なステップとして本研究は意義深い。
監訳者注:
※MexCD-OprJ ポンプ:RND ファミリーとして現在、12 種類のポンプが同定されており、そのうち MexCD-OprJ は MexAB-OprM および MexXY と並んで、臨床分離株で過剰発現が認められることが多いものの 1 つ。
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